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戦国哀歌75

正しくの。裏切りの空蝉が夢幻の如く輪廻しているだけじゃてと、男は言った。

ドラの音が遠ざかって行くのに耳を傾けながら、男が言う。




「人生五十年、下天の内にくらぶれば夢幻の如くなり。これを裏切りの信条に当て嵌めると、人生に於ける生は夢幻の如く解釈で、死は仏に委ね、人生の実体、地獄も極楽も夢幻ではないと言う事になるわけじゃ。じゃが、俺はその信条に逆らい全て夢幻だと思っているんじゃ。そして心も空蝉のように夢幻の如く振り子のように揺れながら、あらゆる概念を裏切っていながら相互依存している空であり、その空に弄ばれ、逆に弄んでいる夢幻が我等人間ならば、はかなく露のごとしであり、曖昧模糊なる存在でしかないわけじゃ。その全て裏切りの空蝉を我も信長も愉しみ生きているところに、戦国の世の裏切り、裏切られる生き甲斐は夢幻の如くあると、俺は思うんじゃ」




才蔵が言う。





「信長めの死生観がお主には分かるのか?」





男が恭しく頷き言った。





「そうじゃな。信長は俺と同じく裏切られるのが嫌いじゃが、相反して己が裏切るのは好きなのじゃ。そして俺の心も信長の心も同質であるならば、逆も真で、裏切りの空蝉の如く心は裏切られる事を待ち望み、裏切りたくない信条をも孕み空蝉の如くあり、その空蝉が死生観をも信じておらず、そのまま夢幻の如くなりじゃろうな。俺はそう思うわけじゃ」




才蔵が憎悪を込めて言う。





「夢幻の如く残忍さが我が同門の者を容赦なく殺している現実があるならば、それも夢幻の如くなる空蝉と言うのか?」





男が相槌を打ち答える。





「正しくの。裏切りの空蝉が夢幻の如く輪廻しているだけじゃて」

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