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戦国哀歌74

俺はあんたが好きなのじゃが、嫌いなのじゃと、男は言った。

遠くからドラの音と怒号が聞こえて来るのに耳を傾けながら、男が続ける。





「俺は戦場に情けは一切入れない主義を貫いている。情けなど入れていたら戦場ではいくつ命が有っても足りないわけじゃ」





才蔵がけだるい表情をして尋ねる。




「何が言いたいのじゃ?」





男が嘲笑い答える。





「あんたは戦場に情けしか持ち込んでいないわけじゃ。そんな戦場の掟に逆らうあんたの情けは正に掟を裏切っていて、面白いわけじゃ。尚且つあんたは情けにただ流されているのに生きているしの。言わば死人の筈なのに生きているのが、この世の摂理を裏切っていて面白いわけじゃ。まるで妖怪変化のごとく存在と一緒にいると、わしは心躍るわけじゃよ。愉快じゃのう」




才蔵が男を睨みつけ言う。





「わしを愚弄しているのか?」





男が否定する。




「愚弄などしていないわ。俺は戦場の冷酷さに逆らい生きているあんたを、むしろ尊敬している位なんじゃ。じゃがのう、俺は全てを裏切っていたい人間だから、こんな自分の考えにも裏切っていたいんじゃ。だからわしはあんたを好きなんじゃが、真逆に嫌いで、その心情にも、揺れる振り子のように逆らっていたいのじゃ。だから俺は今こう考えているわけじゃ。あのドラの音が近付いて来て、捕縛打ち首獄門になりたいのじゃが、反対にそれは嫌なんじゃ。そんな心情なんじゃ」

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