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戦国哀歌7
綾との押し問答に、老獪な長老はいなし惚ける。
正座をして真っ直ぐに長老を見詰めながら、綾が問う。
「長老、いなし惚けないで答えて欲しい。私と幸助は夫婦として添い遂げるのか。どちらなのじゃ?」
老獪な謎の内に包めるような塩梅で微笑み、長老が言った。
「この世は空蝉、夢幻のごとき世ならば、添い遂げる事とは、これ又空蝉のごとくじゃ。極楽浄土に赴いて、添い遂げる事こそが、これ真の冥福の有様じゃろうて」
綾が首を振り言う。
「長老惚けるな。答えになってはいない。私は極楽浄土に赴くのが何時なのかを尋ねておるのじゃ。私と幸助が現世で添い遂げる前なのか、後なのか答えよ、長老?」
微笑んだまま長老がそっぽを向き言った。
「全て御仏の御心じゃて」
その答えに綾がいきり立つのを制して、幸助が合掌してから言った。
「分かりました。長老、本日は軍配頂き、有り難うごさいました」