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戦国哀歌67
才蔵は迷っている。
男を救出すべきかどうか才蔵は迷う。
男を救出して逃亡し捕縛されれば、自分も同罪打ち首獄門は免れない。
そしてその裏切りは一向宗全体に対する裏切りとなる。
それは絶対に出来ないと考える反面、幸助の事を思うと、喉から手が出る程に毒消しの手掛かりを求めているのも否めない事実だと思う。
男は拷問されつつも、自白はしていない。
その状況を鑑みて、以前と同じように半信半疑の状態は変わらないのだ。
男が内通者だというのが言い掛かりで、打ち首獄門にされてしまえば、毒消しの手掛かりを失ってしまう。
長老の言葉を信じるならば、男は確かに毒消しの手掛かりをもたらす筈であり、それを失うのは論外だと才蔵は考える。
迷い、どうしたら良いのか分からなくなる。
一層男が自白をして打ち首獄門になってしまえば型はつくのだが、男は自白をしてはいない。
その事実が才蔵をひたすら迷わせる。
燈籠を前にして才蔵は腕を組み、ひたすら迷い黙想する。




