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戦国哀歌61
決戦に臨み、一向宗法主の息子は考える。
堅牢なる城の中、一向宗法主の息子は考える。
我が城は四方を川に囲まれた要害の地に建っている難攻不落の城と言えよう。
じゃがと息子は思う。
難攻不落でも完璧は有り得ないのだ。
一度目の決戦では信長の軍勢は大軍を乗せる船の調達が上手く行かず、結果河を渡れずに苦渋を飲んだ。
間者の伝令に依れば信長は大船の調達を急いでいるがままならない由が漏れ伝わっている。
しかし信長は一度目の時よりも陣容を整え、こたびの決戦に敢えて望んで来たのも確かであり、油断は出来ない。
信長の軍勢は勝算があるからこそ、攻め入って来たのだ。
その勝算が何なのかを法主の息子たる城主は考える。
信長勢に首尾よく船の調達が相成ったという情報は伝わっていない。
ならばその勝算は何じゃと息子は考えるが、分からない。
戸惑うばかりに息子は腕を組み、息をついた。




