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戦国哀歌60
馬上の秀吉がしたり顔で微笑んだ。
一向一揆第二次決戦に赴くべく秀吉の軍勢が移動する。
信長は有能なる者をどんどん取り入れた代わりに、ミスは許さなかった。
ミスに対しては容赦ない鉄拳制裁が待っていたと言えよう。
致命的なミスは打ち首獄門が待ち受けている。
任務を完璧にこなさなければならない緊張感は、将や兵士に想像以上のプレッシャーを与える。
負けは許されないのだ。
軍勢の中には当然本番に弱い者もいる。
それらの者を心身共に巧みにリラックスさせ、上手く使いこなしたのが秀吉と言えよう。
秀吉は馬に跨がって移動する。その周りを臣下の者が秀吉の人徳に引かれつつ警護する。
重臣の一人に秀吉が尋ねる。
「金堀人足の手配はついたのか?」
馬周りを固めるように重臣が会釈し答える。
「はっ、滞りなく!」
馬上で秀吉が会心の笑みを湛え言った。
「よし、これで敵の城二つは陥落できたのう。上様の喜ぶ顔が目に浮かぶわ」
そう言って秀吉はしたり顔の頬を摩り、舌舐めずりをした。




