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戦国哀歌57
男がふてぶてしい口調で言った。
才蔵が探るような間を計らい言った。
「実は、わしは一向衆門弟なのじゃ」
男が眼を剥き言う。
「あんた、一向衆の者なのか。ならば話しは早いではないか。ならば野良着など着ずに、僧兵の成りをして堂々と名乗れば良いではないか。違うのか?」
才蔵が答える。
「それは構わないが、こなたの寺には多分顔見知りもおると思うのじゃ。じゃからそなたを連れて行けば、逆に不自然じゃないかと思うのじゃ」
男が鼻で笑い言った。
「そんなのはどうと言う事はない。寺に入門して来た新参の信者だと宣えば、誰も疑いはするまい」
才蔵が怪訝な顔付きをして言った。
「そうじゃろうか?」
男がふてぶてしい口調で答えた。
「不自然な事は何もないではないか。違うかの?」




