戦国哀歌5
今日は夫婦の未来を占う占術は施さないぞと、長老は言った。
長老の住まいに入り、二人は長老に向かってつつがなく合掌をなし、念仏を唱えた。
それに呼応するように長老も合掌念仏を為して、滞りなく挨拶が交わされた。
含むように長老が言う。
「綾も一緒か?」
幸助がうなだれるように答えた。
「はい」
藁葺き屋根の家屋は通気性が良く、外よりも涼しい。
坊主頭で、眼が大きく猿顔をした長老が言った。
「今日は夫婦の未来を占う占術は施さないぞ。わしはそんな気分ではないしな」
自分の思惑を見透かされ、うろたえるのを胡麻かしつつ、幸助が言った。
「いえ、本日は砦戦について尋ねたく、来ました」
長老が苦笑いしてから言った。
「砦戦は雑賀衆の者が加勢に来る。それだけの話しで、後はいつもと同じじゃて」
綾が幸助の代わりに気丈な感じで尋ねた。
「種子島に依って相当数の人間が死ぬというのか、長老?」
長老が不敵な感じで微笑み答える。
「その通りじゃ。敵も味方も相当数の死人が出る事は自明の理じゃろうて。御仏の導きのままじゃ」
幸助がすかさず突っ込む。
「才蔵の命は無事ですか?」
長老がいともたやすく答える。
「無事じゃろう。そして才蔵は種子島に精通するわ」
綾が言う。
「才蔵さんは傭兵になるのか?」
長老がとぼける仕種をした後、おもむろに答えた。
「ならぬは」