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戦国哀歌48
殺せば殺されるの、因果律に僧正は思いを馳せる。
僧正は思う。
長老が言った負けるが勝ちの意味を。
その言葉には深い意味合いが込められている。
因果律。
長老の言辞には因果応報の深遠なる法則性が窺えると僧正は思いを馳せる。
例えば信長が一向宗を殲滅せしめても、信長も又煩悩多き徒然なる者ならば殲滅、滅する事は自然な理なのだ。
因果応報とはその自然なる摂理の整理整合された姿に他ならない。
人の生死を陰陽の表と裏を成す理とするならば、因果応報の法則性はその自然なる摂理を支え整合性を保つ基盤に他ならないと、僧正は思う。
殺せば殺されるの因果的整合性を、あくなき戦闘と言うのは、その破壊性に相矛盾して形作り、その整合性を無駄なく美しさを感じる程に整えていると僧正は思う。
信長は我が信者を残忍に殺戮しながら、自分の殺されるその死期を早めているのだ、それが長老の言う負けるが勝ちの意味なのだと念じ、僧正は念仏を唱え、黙想した。




