戦国哀歌40
看病疲れで綾が高熱を出した。
綾が看病疲れで倒れてしまい、高熱を出した。
現代でいうところの風邪なのだが、当時は特効薬など当然なく、薬草を煎じ飲ませ、身体を暖めて、水分補給し、濡れた手ぬぐいで冷やすしか治す手は無かった。
そしてすわ流行り病かという恐怖感もあり、高熱の患者には誰も近付きたがらないのも厳然たる事実であったと言えよう。
当然、病が伝染しないように引き離され、幸助の看病は僧正警護の僧兵達が分担で行い、綾には長老が張り付いた。
咳込み、だるそうにしながらも、綾は幸助を気遣う。
「床擦れが悪化しないように注意してくれ。長老」
綾の額に水で冷やした手ぬぐいを充てがい長老が相槌を打つ。
「万事滞りなく致すからの、心配するな、綾」
綾が眼に涙を溜め、咳込み、苦しがるのを、長老が背中を摩り介抱する。
「看病疲れじゃ、綾。水を飲んで熱を冷まし、身体を休めるしかないんじゃ、綾?」
長老の言葉に綾が返事をせず、咳込んだ後、身体を小刻みに震わせながら鼾をかき始めた。
その様子を見て肺炎の恐れを感知し、長老は手ぬぐいをもう二本水で濡らし、絞って、それを綾の脇の下に挟み込むようにして、返す手で熱くなった額の手ぬぐいを水に濡らし、再度絞って、額に充てがった。




