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戦国哀歌36
長老が毒消しの煎じ薬を作るべく、土鍋を杓で掻き回し、息をついた。
無駄なのを承知で長老が薬草を煎じ毒消しを作る。
あらゆる薬草を煎じ、その効能を自ら毒味してみたが、決め手となる毒消しには辿り着けない。
と言うよりは、幸助を倒したその毒薬の調合方法にも辿り着けないのが現状だ。
才蔵が毒消しの手掛かりをもたらす可能性は五分と言える。
今は乱世の時代、自らの思惑通りに事が進まないのは当然と言えよう。
だが一つ変化が有った。
才蔵が毒消しの探索に旅立ったから、以前よりは頻繁に寺に赴く事が出来るようになったのだ。
つまり。
才蔵がいなくなった分を加減法で補う形を取り、調和が取れ、そのままの図式で敵からも襲撃を受けない形は温存出来たのだ。
だがこの図式が、才蔵の任務遂行の加減を正負にする可能性も当然孕んでいるわけで、予断は許されない。
そして才蔵の生死の問題はこの加減法に、あらゆる人間の混沌としての運命が絡んで来るので、未知数となってしまうのだ。
その迷いが長老に苦悩をもたらす。
長老は湯気が立つ薬草が入っている土鍋を杓で掻き回し、肩で息をついた。




