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戦国哀歌34

わしは非人の物乞いじゃ。だから芋をくれと、男は言った。

当時の民はみすぼらしく、貧しいのが当たり前であり、身なりで人を蔑むと言う風潮は無かったと言えよう。




粗食が当たり前であり、現代の飽食時代からは考えられない程に人々は食に飢えていた事も想像に難くは無い。




街道に空っ風が吹くと、砂埃が舞い上がる。




それが眼に入らないように気を使いながら行商人の恰好をした才蔵は歩く。





敵地なので懐に短刀を忍ばせている程度で、人目につく武器は所持してはいない。




才蔵は誰かが自分をつけているのを感得しながら歩いている。





追いはぎの類かとも思えるが、油断はならない。




一本の巨木の下に古びた掘っ建て小屋があり、才蔵は素知らぬそぶりを見せつつ、右に曲がり、掘っ建て小屋の陰に身を潜めた。





その才蔵を追うように走る足音がして、その足音が直前に迫ったところで、才蔵は踊り出て、どすの効いた低い声で脅しをかけた。





「わしに何の用じゃ?」




脅されて腰砕けになった男が両手を挙げ、答える。





「俺は腹が減っているんじゃ。あんたさっき干し芋を食っていたろう。それを俺にくれないか?」





才蔵が男をねめるように見詰め言った。





「貴様、エタの類か?」





薄汚れた小袖の着物を纏った男が答えた。





「そうじゃ、悲人じゃ。物乞いじゃ、だから干し芋をくれ」

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