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戦国哀歌32
信長暗殺の為に雑賀衆の僧兵頭は策を張り巡らす。
雑賀衆の僧兵頭が策略を張り巡らす。
下剋上の中では裏切りこそが正義なのだと。
裏切り、内通する者が敵勢力を散り散りにする現実。
敵方もその事実を熟知しており、双方敵を欺く内通者を確保する為に水面下で闇を跋扈し、躍起となっている。
一進一退の攻防が続く中、火繩銃に依る狙撃戦が主体となり、その主導権を握った側に凱歌が上がる事実。
そしてそれは我が雑賀衆の誉れであると僧兵頭は自負する。
だがと、僧兵頭は思う。
狙撃の結果敵勢力を殲滅せしめても、それは更なる報復戦を喚起するだけで、埒は開かない。
泥沼とも言える報復戦に終止符を打つには、信長を直接狙撃し、暗殺するしかない。
その戦術とタイミングだけが問題なのだと、僧兵頭は考える。
仲間を殺された仕返しを、敵の烏合の衆、雑魚にするのではなく、頭を暗殺する戦術。
それにしか光明は見出だせないと、僧兵頭は結論する。
信長重臣の中で裏切り内通する者はおらぬかと策を張り巡らし、僧兵頭は長く息を吐き出した。




