戦国哀歌235
光秀傘下の刀槍指揮官に影は幸助を引き会わせた。
影が幸助を光秀傘下の刀槍部隊の指揮官に引き会わせた。
影が指揮官に向かって鷹揚に言う。
「この者は弓も達者に扱い腕が立つ。一騎当千の猛者じゃ。毛利勢など蹴散らしてくれようぞ」
幸助と同じく下座に座している指揮官が礼を尽くして慇懃に宣う。
「有り難き幸せに御座りまする。万端滞りなく戦の準備も整った折り、このような加勢を頂き、真に感謝致しまする」
影が相槌を打ち言った。
「これは他言無用の由なのじゃが、そなたは明智光秀様の謀反の噂聞き付けておるかのう?」
指揮官が礼を尽くしたまま答える。
「人の口に戸板は立てられない由、そのような噂は囂しく、それがしの耳にも届いてはおりまする」
影が興味津々の顔付きをして尋ねる。
「そなたはそれを信じておる由か?」
心虚にして畏まっている幸助を一瞥してから、指揮官が首を振り答える。
「いえ、噂はあくまでも噂故、それがしは信じてはおりませぬ」
影がかまをかけるように尋ねる。
「しかし様々な要素要因が重なり、光秀様に謀反の意向有っても誰もそれを咎め立てする者はいない由。仮に光秀様謀反が現実のものとなった場合、そなたは従う由か、どうじゃ?」
指揮官がきっぱりと言い切る。
「それがしは上様に刃を向けるごとく乱心には、従わぬ所存に御座りまする」
影がしきりに相槌を打ち言った。
「それを聞いて安堵したわ。わしの腹心、思う存分に使いて毛利勢との合戦、戦勝に導いてくれ。その折りはわしも加勢致す所存じゃ」
指揮官が平伏して礼を述べた。
「有り難き幸せに御座りまする」




