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戦国哀歌234
何が何でもやり遂げるしか道は無いのじゃと、長老は言った。
長老が僧兵に向かって言う。
「どうやら自害するは免れたようじゃ」
僧兵が尋ねる。
「これから先も幸助は自害せずに済みまするか?」
手に持っている石ころを下に置き長老が答える。
「幸助は完全に狂い、綾を仇だと思うておる。然るにその憎悪を煽り、自害を阻止して信長暗殺に結び付けるしか策は無いじゃろう」
僧兵が眼を丸くして再度尋ねる。
「お門違いもいいところでは御座らぬか。何故幸助は綾を憎む由に御座りまするか?」
長老が答える。
「幸助は乱心しておるからのう。真っ当な理屈、筋道は通らないのじゃ。然るにその乱心を逆手に取って、燃えたぎる憎悪に火を点け、自害するを阻止し、信長暗殺に結び付けるしか道は無いのじゃ」
僧兵が息をつき尋ねる。
「そんなに上手く事は運びまするか?」
眉をひそめ長老が言った。
「何が何でもやり遂げるしかないのじゃ。何が何でもな」




