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戦国哀歌233
相分かった。わしは主に従い綾への敵討ち本懐遂げるまで自害はせぬ。絶対にせぬわと、幸助は言った。
すかさず長老が一声笑い言った。
「幸助よ、その通りじゃ。綾はお主の敵故殺さなければならぬ相手、しかし綾は生きておる由故殺さなければなるまいて。お主の主人たる影の命令に従い、そなた、見事綾を殺すのじゃ」
幸助が泣き笑いしてから、引き攣るように笑い答える。
「分かった。わしは信長故、綾を殺し見事才蔵となって、綾への恋心を遂げ敵討ちをなそう。それがわしにとっての信長暗殺ひいては綾への敵討ちになるわけじゃ。腕が鳴るのう」
綾が長老の言葉に追従する。
「そうじゃ、幸助よ。自害などしたらわしを殺せぬ故自害などしてはならぬ」
幸助が狂喜して言う。
「相分かった。わしは綾への敵討ちを成すまで自刃はしない。絶対にせぬわ!」
綾が声を曙色に染めて言った。
「そうじゃ、幸助。その意気でわしを見事殺してみろ!」
幸助がやり切れない顔付きをして一声笑い言った。
「相分かった。わしは主に従い綾への敵討ち本懐遂げるまで自害はせぬ。絶対にせぬわ!」




