戦国哀歌231
わしが御かあ討ったが御かあなのじゃ。違うのかと、幸助は悲しげに言った。
闇の幸助が、眼が無いのに啜り泣き言った。
「わしは苦しいのじゃ。味方を手にかけ、よもやと思うていたおとうを刃にかけ、心がぼろぼろなのじゃ。これで己の命さえ滅っする事能わずでは、わしは救いようが無いではないか。御かあよ?」
綾が強く反論する。
「才蔵や他の仲間達は皆信長暗殺だけを願い、無念の内に極楽浄土へ赴いたのじゃ。その仲間達の無念、晴らしてやろうとは思わぬのか、幸助よ?!」
幸助が闇を震わせ嗚咽してから言った。
「わしは楽になりたいのじゃ。みなしごのわしを虐めるでない」
すかさず綾が言う。
「わしもみなしごじゃ!」
幸助が泣き止みけだるそうに言った。
「もう楽にしてくれ。これ以上女々しく泣くのは嫌なのじゃ。極楽浄土に赴かせてくれ」
長老が反論する。
「信長暗殺無くして極楽浄土無しじゃ。幸助よ」
幸助が力なく言った。
「そんな事はあるまいて。わしはやるだけやったのじゃ。御かあよ」
綾が喚く。
「幸助、お主の御かあはここにはいないのじゃ。幸助、しっかりとするんじゃ!」
闇の幸助が泣き笑い言った。
「わしが御かあを討ったが御かあなのじゃ。違うのか?」




