戦国哀歌214
幸助は、己との戦いに勝てば生きるし、負ければ自刃する定めじゃと、長老は言下に言ってのけた。
緊張、緊迫した表情を作り、土間に石ころを投げて占いを為す長老に対して僧兵が尋ねる。
「長老如何なるものですか?」
七個の石ころを両手で掴み、土間に投げて、その向き占い模様を量る占術は、長老の思惑通りの形を顕さないので、長老は苛立って、投げる動作を何度も執り行い、怒声を上げる。
「ええい、どうしても幸助の石ころが迷い、下に行ってしまうのじゃ。これでは駄目なのじゃ。忌ま忌ましいわ!」
僧兵が神妙に頷き尋ねる。
「迷い石ころですか。幸助はやはり自害する存念がある由なのですか、長老?」
長老が再度石ころを土間に振り、転がって下側に位置を定めた一個の石ころを指差し答える。
「これが幸助なのじゃ。幸助は自害するかどうか迷うておるのじゃ。まるで幸助の心は迷い振り子のようよ」
僧兵が眠り続けている綾を見遣り、生唾を飲んでから言った。
「幸助は助かる由に御座りまするか?」
幸助たる石ころを睨みつけ、長老が言下に言ってのける。
「己との戦いに勝てば生きるし、負ければ自刃する定めじゃ!」
僧兵が額に滲んだ脂汗を拭い尋ねる。
「幸助を助ける術は無いのですか、長老?」
長老が苦々しく言った。
「この占術を何度も為すが、幸助の心への呼び掛けになるのじゃ!」




