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戦国哀歌200
一向宗の者は皆殺しだと、影はうそぶいた。
誓約書通り法主は石山本願寺を退去する運びとなったが、嫡子の教如が事実上本願寺を運営し、信長に反目抗戦を続けたので、法主は誓約書を遵守しなかった旨を厳しく問われ、石山本願寺は事実上二派に分裂し、骨肉の争い、内戦状態に至った。
その状況を悦び影が幸助にうそぶく。
「講和も何も無い。そんなものは破却し、一向宗の者は全員皆殺しじゃ」
影の言葉に触発されたように、この内乱に乗じて各地の一揆衆残党を掃討する動きは当然の如く活発化して行く。
影が言った。
「わしらに荒木一門の討ち首、首実検のお呼びは掛からない由につけ、又毒矢を用いて生きる屍を作り、各地の掃討戦を活性化するのじゃ。行くぞ」
幸助がかしずくように平伏して言った。
「御意」




