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戦国哀歌20
幸助は身体を痙攣させながら意識を失った。
矢が引き抜かれ、縄で縛り、止血し応急手当てがなされたところで、幸助は身体を痙攣させながら意識を失い、高い鼾をかいて昏睡状態に陥った。
「毒矢にやられたぞ!」
「詰め所に連れて行け!」
「矢を放った者を逃がすな!」
「邪魔だ、そこをどくんじゃ!」
「毒は何の毒だ!」
「早く薬草を持って来い!」
「命が無いぞ!」
怒号が飛び交う中、一緒に夜回りをしていた僧兵が幸助をおんぶさり、集まって来た一揆衆の円陣をかい潜り、詰め所に運び込んで畳の上に寝かし付け、泣き叫ぶ綾を「しっかりしろ!」と一喝してから、口で傷口を強く吸う毒抜きを開始する。
うろたえる綾がなりふり構わず泣き叫ぶ。
「幸助は助かるのか?!」
仲間が固唾を飲み見守る中、懸命に毒抜きを施す僧兵がもう一度綾を一喝する。
「今は毒抜きをするのが先決じゃ!」
詰め所に押し掛けた一揆衆の一人が仲間を助けるべく念仏を唱え始めると、老若男女問わず皆一同に念仏を唱え始め、綾も泣きながらそれに倣い、うろたえる心を落ち着かせて行った。




