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戦国哀歌193

その戦いは残虐苛烈を極め、仏敵信長の暗殺を以って、解脱に至り、涅槃の静寂を以って収束すると、僧正は念じた。

一泊して帰って来た僧兵から密偵云々の話しを聞き、第一義として、僧正は長老の心根に在る慈愛をおもんばかる。




その慈愛は、現世への極楽浄土の顕在化と呼んで良いだろうと、僧正は思った。





無明なる人間に涅槃に在る御仏の姿は見えない。





見えない敵と戦う事はこれすなわち能わずなのだと、僧正は念じる。





六道輪廻から逸脱し、涅槃の内に在する御仏は戦わずして信長にも勝利しているのだ。





だが現世に降臨した御仏は肉体を持ち、その物理法則との葛藤を激烈なる戦いを以って修業と為す。





そしてその苦行を慈しみを依って脱却し、我が肉体の煩悩をも滅却して、現世に在りながら肉体を涅槃に入滅させ、おのが宿命を生死のことわりから脱却させ、解脱に至る。




それが歴代御仏に仕えた上人の境地なのだと僧正は思う。




その慈しみこそが念仏の体現化であり、御仏の涅槃、ひいては極楽浄土に通じる魂の救いなのだと、僧正は思う。





そして、長老は見紛う事なく涅槃の内に心を置き、現世全体の煩悩と戦い、それを解脱せしめようとしているに違いないと、僧正は考える。




幸助の仲間を殺戮し、信長の暗殺に結び付けるその行いこそ、現世そのものの煩悩を滅却する苦行、戦いであると僧正は断じる。





その戦いは残虐苛烈を極め、仏敵信長の暗殺を以って、解脱に至り、涅槃の静寂を以って収束する。




その戦い、苦行は正に今が最中なのだと念じ、その残虐なる戦いの中に御仏の静寂なる涅槃を感得し、我が念仏と為すべく、僧正は手を合わせ、居住まいを質して題目を唱えた。

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