戦国哀歌190
身内を信長に惨殺され、涙さえ涸れた僧兵頭が信長暗殺の執念に燃える。
僧兵頭は考える。
家族は全員信長に惨殺された。
天涯孤独の身の上話しをするにも、その仲間、戦友すらいない状況の中で、僧兵頭を生かし続けているのは、信長暗殺の執念しか無い。
悲しみに涙は涸れ、もう泣く事すら出来ない状況。
逃亡を繰り返し、戦線から離脱して、一人旅籠に逗留して僧兵頭は策略を張り巡らして行く。
信長は自らの包囲網を突破するべく、一向宗を殲滅、それに依り不穏分子にプレッシャーを掛けつつ懐柔、和睦を成して、天下布武に突き進んでいる。
信長の軍勢は連戦連勝に沸き立ち、歓呼の声を大にして一枚岩となり、信長を支え、鼓舞している戦況だ。
得てして、そこに付け入る隙は無いように見える。
肩に矢で受けた傷が疼くのを手で摩りながら、だがと僧兵頭は考える。
下剋上の世情に一枚岩と言うのは有り得ないと、僧兵頭は想いを巡らす。
必ずや付け入る隙はある筈だと念じ、それは何かと自問自答するが、答えは出ない。
ふと内憂外患と言う語句が頭に浮かび、それに何かしらのヒントを見出すべく僧兵頭は想いを巡らす。
信長の現在進行している状況は、外患にのみ眼が向き、内憂をおもんばかる暇は無い。
そこに何かしらの糸口があるのではないかと、僧兵頭は想い付き、息を吐き出してから、おもむろに腕を組んだ。
 




