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戦国哀歌187

刹那、それは才蔵だと感得して、幸助の虚ろな心が一転怨嗟と憎悪に燃えたぎり、殺意が擡げるのを、幸助は息を吐き出し堪えてから、おもむろに相槌を打ち、平静を装ってやり過ごした。



影が幸助に流し目をくれてから続ける。





「この野草を調合して採れる毒には毒消しなるものは存在しないのじゃ。一度、一向衆の手だれの者が毒消しの手掛かりを欲し、わしは炙り紙を密書となして提示する虚偽を演じたが、そんなものは嘘八百、わしの首を差し出す手練手管の欺きだったのに、きゃつはわしを討ち取る事も出来ない腑抜けで、その偽造密書の偽りに焼かれ、種子島で撃たれて、鼻をもがれて犬死にした経緯があったわ。あの者、腕は立ったが、心ここにあらずの小心者で、わしの裏切りの信条をも理解出来ない拍子抜けの腑抜け、大うつけの輩だったわ」




刹那、それは才蔵だと感得して、幸助の虚ろな心が一転怨嗟と憎悪に燃えたぎり、殺意が擡げるのを、幸助は息を吐き出し堪えてから、おもむろに相槌を打ち、平静を装ってやり過ごした。




幸助のその心の動きを気取る事もなく、影が続ける。




「じゃがのう。この毒に毒消しなる物が無いと言うことわりに反して、わしが毒消しを心に抱けば、わしは己の首にさよならの挨拶を交わし、勿論胴体と首が離別しての交わしなのじゃが、そのまま毒消しとなして、おのが生を裏切り、死を我が物に出来るのじゃが、しかし毒消しを欲したあの腑抜けの事を思うと、その死は犬死にとなり、犬死にならばしたくはないと言う、そんな矛盾、存念もあるわけじゃ。困ったものよのう」

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