戦国哀歌180
影の言動が病んだ幸助の心を益々傷付けて行く。
そんな折り。
太股に毒矢で射ぬかれた黒ずんだ傷跡があり、それが疼きしくしくと痛み、左半身の麻痺が治らない状態のまま、幸助の心はひたすら病み蝕まれて行く。
その幸助の病んだ心を影の言動が益々傷付けて行く。
畦道にうずくまり、白い花が咲き乱れる野草を束ねるように摘み取り、影が同行している幸助にうそぶく。
「こんな可憐な花を付ける野草が生きる屍を作る毒の本になっているのを、一向衆の腑抜け共は誰も知らないのじゃ。痛快じゃのう」
無表情のまま礼を尽くし、幸助が返事を返す。
「御意」
影が野草を無造作にぞうのうに収め続ける。
「わしの誉れである裏切りの信条に依って、各地で一向宗の内乱が勃発しており、我こそは下剋上の天下人なりと、坊主同士が腐臭放つ権力闘争をしておるわ。これも痛快の極み、愉快じゃのう」
心を閉ざしたまま幸助が答える。
「御意」
影はそんな幸助に、何時でも首を撥ねよと言わんばかりに背中を見せたまま、話しを続ける。
「どんなに極楽浄土の美しさお題目を唱え、綺麗事を宣わっても、所詮坊主も人間、権力の虜になって、我欲のままに仲間をなぶり殺しておるわ。これ正に下剋上の信条、裏切りの天下人ではないか。極楽浄土が聞いて呆れ、腐れ外道の誉れに相違ないわ。痛快じゃのう」
 




