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戦国哀歌177

長老は幸助に授けた策略を他言無用、秘め事と為し、誰にも明かしてはいない。

僧正警護の僧兵が眠り続けている綾をおんぶして、その隣を長老が歩き、三人は長老の庵へと向かっている。





僧兵が長老に尋ねる。





「もう一度尋ねまするが、長老宅に綾を寝かしつけ、介護すれば綾は目覚めると言う事に御座りまするか?」




長老が少し苛立ちつつ答える。





「違う。僧正にも言うたが、幸助に与えた毒消したる薬草を綾に与えても効能が無かった由故、綾を寝かしつける方位方角を変えてみるという苦肉の策なのじゃ。そして綾に合う毒消しの調合もわしの釜戸でした方が効率が良いわけじゃ。相、分かったか?」




僧兵が答える。





「相、分かりました。つまり綾を長老宅に方位を変えて連れて行き、そこで新たに調合した毒消しを与えれば、綾は目覚めると言う事に御座りまするね?」





長老が僧兵の足取りに己の歩調を合わせ、進みながら言った。





「それも違うの。要するに綾を詰め所に寝かしつけて新たに調合した薬草を手間隙掛けて詰め所に持ち寄るのは面倒じゃし、綾をわしの庵につれて行けば、その手間隙が省け、綾に合った毒消しの調合が迅速に出来うると言う事じゃ。但し、綾をわしの庵に寝かしつけて方位方角を変えて、新たなる毒消しを与えても、綾が絶対に目覚める保障はなく、試しに移動する苦肉の策と言う事じゃて」




僧兵が苦笑いを頬に浮かべ言った。





「ようやく相、分かり申した。しかし長老、敵地に間者として赴いた幸助の命、危うくはないのですか?」





長老は幸助に授けた策略を他言無用、秘め事と為し、誰にも明かしてはいない。明かせば呪いが全て水泡に帰す事になるのを長老は知っているからなのだが、その経緯を踏まえた上で、長老は答えを短くして口に出した。




「幸助は苦労するが、その分死ぬ事は無いのじゃ…」

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