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戦国哀歌175
影は幸助にいみじくも言った。この弓を操り、そなたが一向宗の者を生きる屍にするんじゃと。
徹底的に影の軍勢の刀指南役に成り切る。
幸助に許された道はそれしかなく、当然影に毒消しの事など尋ねる事は言語道断、埒外のことわりとなっている。
そして石山本願寺との合戦を間近に控えたある朝、敵地の内偵に影と一緒に赴く旨通達が出され、幸助はそれに従った。
一介の行商人に身をやつした幸助と、同じ変装を手慣れた手付きで為した影が一向宗の領地内に入り、素知らぬ風情で旅籠に宿を取る。
一向宗の領地内の検分を、慎重に滞りなくして回りつつ市場で行商を演じている時、影はやはり行商人の格好をした味方の間者から弓と矢を受け取り、それを幸助に手渡し、いみじくも言った。
「この矢には毒が塗ってある。この矢を使って、これから一向宗の者を生きる屍にするのじゃ。これから、この弓をそなたが操り、一向宗の者を生きる屍にしてくれ」




