戦国哀歌174
仲間を殺し続ける事が信長暗殺の捨て石、呪いになると言う地獄の日々に、幸助の心は病み、自害して果てる事も許されず、崩壊寸前となっている。
一日の仕事が終わり、湯浴みをして寝室に戻ると、幸助は人知れず声を上げずに熱い涙を流す。
影は幸助の前で己の首を差し出して、何時撥ねても良いぞとうそぶき、幸助は燃えたぎる憎悪にほだされて、仇を討つべく、即刻討ち取りたいのだが、長老にそれはしてはならぬと厳命されており、臍を噛み、耐え忍んでいる。
それに加えて、あろう事か仲間を殺す悍ましい日々が何時果てる事もなく続いて行く無間地獄。
良心の呵責に押し潰されそうな心の熱き情念、誇りとも言える自責の念を押し殺し滅し、仲間を殺し続け、それが信長暗殺の捨て石、呪いになるという抗えない宿命とも呼べる歎きに、幸助はただひたすら涙する。
信長暗殺の主命の為に、意に反して憎い仇に隷属し、仲間を殺し続けなければならない地獄の連鎖に幸助の心は病み、崩壊寸前となっている。
一層自害して果てたいのだが、仲間や綾の事を想うと、それも許されはしない。
敵地なので、合掌を為し、念仏も唱える事が出来ない己の惨めな境涯を、幸助は歎き泣き続けるしかなかった。




