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戦国哀歌170
髷を結った幸助が、対雑賀衆銃撃戦に影の軍勢の一人として参画している。
雑賀衆鉄砲隊が立て篭もる中野城の城下町に影の軍勢が入り、銃撃戦をする傍ら容赦無い焼き討ちを行って行く。
その軍勢の中に戦を指揮する髷を結った幸助の姿が在った。
幸助は長老の策略の下、影の刀指南役として士官し、影を欺き影にその腕を買われ登用されたのだ。
当然影の臣下になると言う事は一向宗の敵に回る所業であるが、幸助は長老の深謀遠慮に従い、味方を殺すその行為、心の軋轢と悲しみに、感情を押し殺し耐え抜き、役目を果たしているのだ。
鉄砲の銃撃戦に刀の指南役が何故と言う疑問はナンセンスだ。
町中での銃撃戦には当然出会い頭の白兵戦が待ち受けており、そのエキスパート、実践の要として幸助は陣頭指揮を取っているのだ。
硝煙の臭いが立ち込める中。
幸助は味方鉄砲隊を尻目にして、長屋の裏手に回り込み、植え込みに紛れるように伏せている雑賀衆の鉄砲隊の一人を、背後から忍び寄り、急襲、馬乗りになって何度も心臓を突き刺して、返り血を浴びた。




