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戦国哀歌168

お前が才蔵となり影、ひいては信長めに仇討ちを果たすしか無いのじゃ。幸助よと、長老は言った。

綾が寝覚めないまま、痩せ衰え、片足が麻痺して動かない幸助の歩行訓練が始まった。





だが歩行訓練中も、幸助は終始泣いており、それを長老は敢えて咎めずに、肩を貸しながら言う。





「泣け、幸助よ。泣いて涙が涸れるその時まで泣け」





そう言われると幸助は又ぞろ号泣嗚咽する。





その繰り返しだ。




寺の境内の中を歩行訓練している二人に、寺に常駐している一揆衆が出会うと、皆合掌し、念仏を為してすれ違って行く。





それに相槌を送り目配せをしながら長老が続ける。




「幸助よ、泣きながらでも良いから聞いてくれ。各地の決戦は信長の連戦連勝。我が陣営は皆殺し全滅の憂き目に会っておる状況じゃ。じゃがのう幸助。この皆殺しは信長暗殺の為の布石、捨て石だと、わしは思うておるのじゃ、幸助よ」




泣き続け、びっこを引いて介助されながら歩いているだけの幸助に、長老はしみじみと言葉を繋いで行く。




「今でこそ言うが、才蔵は心の内で綾を慕い、お前の手前それを口に出す事もなく、お前と綾を助ける為に戦場に赴き、影と言う間者に欺かれ、犬死にしたのじゃ。そんな才蔵の心根は、ひたすら憐れであり、無念じゃったろうと、わしは思うんじゃ。幸助よ」




その言葉を聞いた幸助が驚きの表情を作った後、熱い大粒の涙をぽろぽろと流しながら号泣する。





それに微笑ましい笑みを送り、長老が言った。





「そんな才蔵の無念を晴らし仇を討つ為にも、幸助よ、お前が才蔵となり影、ひいては信長めに仇討ちを果たすしか無いのじゃ。幸助よ」


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