戦国哀歌161
幸助が眼を覚ました。
綾は眼が覚めず、幸助が眼を覚ました。
最初幸助は自分がどこにいるのか分からず、霞んで見える天井をぼんやりと見ながら戸惑っていた。
それに長老が声を掛けた。
「幸助?」
幸助が顎を引き、その声にゆっくりと反応し、長老の顔を見た。
長老が続ける。
「幸助よ。まず身体が動くかどうか試してくれ。手や足を徐々に動かしていくのじゃ。無理に動かさず徐々にな」
幸助が言われた通り、右足の爪先に力をいれ、親指を動かしてみた。
動く。
そして左足にも力を入れ動かそうとしたが、感覚が麻痺していて動かない。
太股の筋肉が強張り、そこに力を入れると痛みが走り、幸助は顔をしかめた。
それを見て長老が再度アドバイスをする。
「幸助よ、お前は長い間眠っていたので、身体が痩せ衰え、毒が完全には抜け落ちていないのじゃ。じゃから、徐々に回復するように訓練が必要なのじゃ」
幸助がゆっくりと相槌を打ち、隣に寝ている綾を見遣り、怪訝な顔付きをしてから、長老に尋ねた。
「…綾は?」
長老が答える。
「綾も毒にやられてしまい生きる屍状態なのじゃ。わしの毒消しで、お前は目覚めたが、綾は眼が覚めないのじゃ…」




