表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/250

戦国哀歌154

大僧正が震え出し、もう駄目じゃと動揺する口調で言った。

一同通用口を潜り、大人数の隊列を組んで見回りをしている信長勢の兵士達の眼を盗み、小川の周囲に生い茂る葦の陰に身を潜めていると。




畦道を軍馬が走って来て、伝令の武者が「一人も逃がすな。皆殺しにしろ!」と言う号令を掛けながら通過して行った。




寺の裏庭とは違う、その緊迫した状況を前にして、大僧正が震え出しうろたえ、言った。




「これでは猫の子一匹とて逃げられない。皆殺しされてしまうぞ」




大僧正と同じくほふくしている僧兵頭が冷静そのものの口調で答える。




「とにかく夜が来るのをここで伏して待ち、山に逃げ込んで難を逃れる由にて、辛抱の程よろしくお願い致しまする」





大僧正が涙目になって震える声で否定する。





「待ち伏せしている者。隊列組み見回りしている者の数余りにも多く、彼等の眼を盗んで山に逃げ込む事能わず。例え逃げ込めても、山狩りに会い、捕縛され蹂躙惨殺されてしまうのが落ちじゃ」




僧兵頭が小声で宥める。





「投降したとて、討ち取られる事に違いなく、それならば一縷の望みを捨てずに山に入るしかありません。御辛抱の程を?」





大僧正が片手を面前に掲げ、囁くように念仏を唱えてから言った。





「相、承知した」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ