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戦国哀歌152

綾の名前を呼ぼうにも、口が動かないのを感じつつ、才蔵は念仏を念じ、静かに瞼を閉ざした。

意識が薄れて行く中で、才蔵は夢を見ている。




広大な草原を幼い綾と一緒に手を繋いで駆け回っている夢だ。




綾も幼く、自分も幼く、二人は夢中になって草原の果てまで行こうとして、走っている。




ふと才蔵は綾の手が冷たくなって行くのを感じ、言った。





「何故こんなに手が冷たいのじゃ?」





綾が答える。





「ここは地の果てじゃから冷たくなるのじゃ。そしてここは極楽浄土じゃからお別れじゃ」




その言葉を聞き、幼い才蔵は泣きじゃくる。





泣いている才蔵の顔を見ている綾の手の冷たさが広がって行き、やがて姿を消し、草原そのものになった綾が言う。





「さようなら」




独りぼっちになった才蔵は綾の名前を連呼してうろつくが綾は見付からない。




迷子の才蔵は悲しげに綾の名前を呼び続けるが、綾は答えない。




やがて才蔵は自分の身体が冷たい草原そのものになって行くのを感じ、涙を拭えば身体が温まるのを感じ、涙を拭おうとするのだが、手が動かない。





綾の名前を呼ぼうにも口が動かないのを感じつつ、倒れている才蔵は最期の力を振り絞って静かに念仏を念じ、瞼を閉ざした。

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