戦国哀歌143
なぶり殺しに夢中になっている軍勢の者達の首を、才蔵は迅速に次々と討ち取って行く。
パニックを引き起こし、逃げ場を探してうろついている小坊主を、背後から弓で射かけようとしている足軽に、忍び足で血達磨になっている才蔵が近寄り、心臓を一突きにして、刀を引き抜き、そのまま首を撥ね、返り血を避けるように走り出した。
黒い幟に紋章が象られていない、黒い甲冑を纏った軍勢は、死体や討ち取った首から鼻を削ぐその動きに隙が出来、たやすく才蔵は背後から忍び寄り、突き刺し、首を撥ねを繰り返している。
行われている乱戦はもはや戦と呼べるものではなく、単なる掃討、なぶり殺しなので、その分黒い甲冑の軍勢に己が襲われ命を落とすという緊迫感はなく、その分だけ才蔵は討ち取り易いのを感じつつ、刀を何本も打ち捨てては、刃こぼれしていない刀を拾い上げ、忍び襲撃し、走り去るを繰り返し、首の無い死体の山を築き上げている。
転じて僧兵頭は考える。
詰め所は塀に囲まれた袋小路の突き当たりにあり、塀に昇って矢を射かけるにしても、ひさしが目隠しになり邪魔をされ容易ではない。
その分接近戦ではなく、身を隠しつつ狙い撃つ、迎撃戦には向いていると思う。
だが塀の外から詰め所に何本もの火矢を射かけられたら、ひとたまりも無いと、そう僧兵頭は計算した。
 




