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戦国哀歌132
綾が毒矢に射ぬかれて悶絶した。
才蔵と共に毒消しの手がかりを探りたいという願いを、僧正にも蹴られ、苛立ちながら詰め所に向かって境内を歩いている綾の太股を、空気を切り裂く音を立てて飛んで来た毒矢が射ぬいた。
絶叫し、もんどり打って倒れた綾が激痛に辺り構わずのたうちまわる。
その騒ぎに僧正以下大勢の一揆衆が迅速に集結して来る。
「綾が毒矢にやられたぞ!」
「早く止血、手当しろ!」
「詰め所に運ぶんじゃ!」
「矢を放った者を捕らえろ、逃がすな!」
そんな怒号が行き交う中、綾は小刻みに痙攣しながら悶絶し、気を失った。
「毒抜きをしろ、急ぐんじゃ!」
「詰め所に運べ!」
「早く長老を呼べ!」
僧正の指示の下、矢を引き抜かれ、縄で止血し応急手当が施された綾を、幸助の時と同じように僧正警護の僧兵がおんぶして詰め所まで連れて行くのを、同行しながら、僧正が他の僧兵に命令した。
「引き抜いた矢が何処の手の物なのか特定せい!」




