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戦国哀歌131

法主の息子は泣き笑いの表情を浮かべながら、短刀で深く喉元を突いた。

題目を唱え、法主の息子は独り考える。





丸裸の伏兵に身内を惨殺され、信長は怒り心頭であり、降伏してもその怒りは収まらない。





信者は焼き打ちにされ、次々と惨殺されている。




己もやがて信長勢の者に捕縛され、衆人監視の下、斬首処刑は免れない。





その処刑には信長自身が立ち会い、信長は激しい怒りと憎悪しか無い眼で自分をねめつけ、死刑執行をするだろう。





処刑される前に自害して果てるしか道は無い。




この顛末こそが、宿命御仏の志ならば、自害して己は極楽浄土に赴き、無念の内に死んで行った信者達の労をねぎらうしかない。




そう思念し、法主の息子は題目を収め、短刀を手にして、その切っ先を喉元に据え構えた。





口元が綻び自虐的な笑いがもれるが、それに相反するように熱い涙が溢れ、止める事が出来ない。




やがて泣き笑いのような表情を作りつつ、ひとしきり嗚咽してから、法主の息子は短刀で喉元を深く突き、前のめりに突っ伏し、鮮血がほとばしり出るのを凝視しながら、その瞼を静かに閉ざした。

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