戦国哀歌125
九鬼船団の黒船から大筒が轟音と共に撃たれ、一向宗側の船に命中、黒煙が上がり燃え出したのを合図に戦闘の火蓋が切られた。
良く晴れ渡った早朝の河辺。
そよ風が頬をくすぐる中。
靄る長島城の中洲河辺に信長の大軍が着陣した。
陸路、海路からの着陣、およそ八万からの軍勢がひしめく中、南蛮渡来の鎧を纏った信長が裏地深紅のマントを翻し、軍馬に跨がっている。
各々重臣の武将も軍馬に跨がり、軍馬が滔々と流れる大河を前にしてざわついているのを宥めるように、馬廻りの者に目配せをして、細やかに手綱を操り落ち着かせている。
色とりどりの紋章をあしらった幟が風にはためき、様々な色の甲冑が己の軍勢の強さをまるで誇示するかのように隊列をなし、押し合うようにひしめいている。
海には九鬼水軍の何百そうもの鉄甲板を象った黒船が信長の軍勢を見守るように曳航し、小船の船団を従えている。
対する最前線の根城の中、僧兵頭が種子島を配備する場所を検討しながら、配下の者達に的確な命令指示を出している。
九鬼船団の黒船から轟音と共に撃たれた大筒が一向宗の船に命中、二人の僧兵が海に落ち、黒煙を上げて燃え上がったのを合図にして、ときの声が上がり、戦闘の火蓋が切られた。




