戦国哀歌112
泥だらけで、ほふくしている才蔵と僧兵頭がほぼ同時に動いた。
土砂降りの悪路。
累々とした無惨な死体が泥に埋まり、それを降り注ぐ雨が洗い、凄惨なる光景を出現させている。
その中を才蔵と僧兵頭がほふくし前進して、乱戦の中を縫うようにじりじりと弓の名手に近寄って行く。
弓の名手を庇うように、一人の槍を持った武将が白兵戦を仕掛けて来る敵を力任せに串刺しにしては放り投げ、又串刺しにして、蹴り倒し、槍を引き抜くを繰り返している。
泥だらけの才蔵がやはり泥だらけのの僧兵頭と合流し、弓の名手と槍の武将を討ち取る手筈を囁き合い決めて、再びほふく前進して行く。
そして槍を振り回す武将との間合いがぎりぎりの処まで詰まったところで、二人はほぼ同時に武将に襲い掛かった。
武将が気取り槍をを僧兵頭に中段に構えカウンターよろしく串刺しにしようとする、その槍を才蔵が居合いさながらに槍の柄を叩き斬り、その隙に僧兵頭が武将の懐に飛び込んで胸に刀を突き立て、武将の絶叫に押し戻されるように離れた刹那、才蔵の刀が武将の首を一閃し、血飛沫を上げながら武将の胴体が槍の柄を持ったまま泥に倒れて行った。




