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戦国哀歌11
一向宗を根絶やし、殲滅せしめる事こそ、天下国家の為だと、そう信長は考えた。
金箔をあしらった異国風の屏風が鎮座している居間。
人払いをして、稚児をはべらせ盃を傾けながら、信長はそぞろ考える。
民を救済するべき仏教徒が、あろうことか、もののふのように武器を持ち、自分に刃向っている事実を。
敵対する勢力と結託し、傭兵に鉄砲を持たせ、その鉄砲が己の配下を散り散りに蹂躙している事実を。
許しまじき現実。
まるで死人のように不気味な念仏を唱え、倒しても倒しても、次から次へと現れる化け物の集団。
生きたまま焼き打ちにしても、念仏を唱え笑いながら死んで行く集団。
信長は怒り心頭に、狂信集団を皆殺しにする事しか考えない。
和を以って、民を救済平定するべき仏教の教えに反旗を翻し、権力に妄執するなど、仏の道にあるまじき行為だと信長は断じる。
狂信集団が夢見る極楽浄土を、我が刃で地獄と化してやろう。
それが真に仏の道に通じる正道だと、信長は信じて止まない。
悪しき邪教を殲滅せしめる事は天下国家の為であると信長は思い、稚児に向かって盃を差し出した。




