ある夏の屋上で(読み切りVER)
僕は屋上が好きだ。
風が気持ちいいから、とか高いからという理由ももちろんあるが
やはり一番は悩みが、心配事が、そして後悔が吹き飛ぶから…である。
だから昼休み、僕はいつも屋上に行く。
大概は一人で、時々友達をつれて。
僕の学校は校舎が5つにわかれている。
三年生の教室がある校舎2つ、一年生、二年生のが一つずつ、そして職員室、特別教室用のが一つだ。
三年の教室の校舎の片方に僕はいつもいる。
屋上といえば人がたくさんいるイメージだが、飯を食うのは中庭が一番人気で
屋上はTOP10には一度も入ったことないってくらい人気がない。
その理由はこの屋上、幽霊がでる、といううわさがあるから。
だがおれはそんなこと気にしない。
だって…そんなもの、存在しないのだから
僕、風間 琢磨はそう思っていた。
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今日は一人で屋上へ行く日。
いつもの通り購買でいくつか食い物を買い、屋上へと向かう。
そこにいたのは…
彼と同じクラスの天音 真奈。彼女とはあまり話したことないし、琢磨がその子を知ったのは三年生になってから。
もちろん、屋上であうのも初めて…。
「君…風間君…だよね…?」
彼女のほうから声を掛けてきたのは意外だった、そう思いながら
「ん、あぁ。そうだよ。」
「よくここに来るの?」
という彼女の問いに対しほぼ毎日来てる…といったらいろいろ誤解されそうだな、そう思い
「まぁ時々」
と適当に返す。すると彼女はふぅんと小声でいいあたりを見回した。そして彼女は続ける。
「ここに出る幽霊、ホントのことだと思う…?」
「いや、おれは幽霊とかお化けとかそーゆーの信じねぇんだ」
「へぇ…」
そういうと、彼女はベンチに座りお弁当を開いた。
それをみてから僕も手すりにもたれかかり、食い物のパッケージを開いた。
天音真奈はルックス、性格ともにいいので男子からはかなり人気がある。
ただ、不思議ちゃんと言われるほど、時々妙なことをつぶやく。
逆に風間琢磨のほうも男らしいということでかなり女子から人気がある。
二人ともクラスの中心人物というわけではなし、目立っているわけでもないが、かなり好かれている部類の人間だ。
しばらく沈黙が続き、それに耐えられなくなった琢磨が口を開く
「天音は…ここへ来るの、はじめてか?」
「う~ん…来たのは初めてじゃないけど、昼休みに来たのは初めてかな…。」
「なんで一人で?」
「たまに、一人になりたい気分になるの…」
「ごめんな…」
「いいのいいの、琢磨君なら静かだし」
「ふ~ん」
「そういう琢磨君はなんで?」
「おれか…?まぁ同じようなもんだよ」
そのあとも二人は食事の間ずっと話し続けていた。
そのあと教室へ戻ると女子は大体グループを作って話しているのに彼女一人、本を読んでいた。
彼女は前からそうだったのか、彼はそうも考えたが、余計な世話だと思い、自分も友人との会話に加わった。
その後彼女は一人でいることが多くなった。
そして昼休みは彼女と二人、というのが多かった。
幽霊が多発する、といううわさが立ったのでついてくるものがいなくなったからである。
彼女と初めて話した日からひと月ほどたったころ、真奈はいつもと違うことを口にした
「風間君、幽霊って信じる…?」
前も、同じ質問を受けたような…、そう思いながらも琢磨は答えた
「いないと思うね。非科学的すぎると思う。」
それを聞き真奈は少しうつむき、こう言いだした
「私…幽霊見えるの。」
「は!?本当かよ?」
「うん、だからここの幽霊を見ようと思って、祓ってあげようと思ってここに来たの。」
あげる…その言葉に引っかかった琢磨だが、お化けというものを、幽霊を祓うところを見たくなった。
「あの…さ、幽霊は信じられないけど、でも天音が言うんだから本当なんだろ?
おれにも…その、協力させてくんねーかな?」
「協力、してくれるの?…ハッ」
彼女の表情が青ざめたのが琢磨にもわかった。
「なんだ!?どうしたんだ!?」
「出たの…」
みえない…、見えないんじゃそうしようもないと思い、
「どこだ、どっちだ?」
あっち、と言わんばかりに指をさした方向にある木、それが風もないのに揺れている。
「!!??」
言葉を失う二人。…やばい。
そう感じた琢磨は真奈の手を握り屋上を後にする、そしてちらっと後ろを見たとき…彼にも見えた…。
「天音、おれにも見えたぜ…」
「うん、多分、私の手を握ったから…」
「手を?霊感がうつるってのか?」
「多分…。」
それから二人は黙った。琢磨は幽霊を見た恐怖感から。真奈は琢磨を巻き込んだ罪悪感から。
そして口を開いたのは琢磨だった
「もう一度行こう」
「え…?」
「あいつを祓う。」
「え…でも…」
「何か、後悔があるんだろ?だったらそれをなくしてやろうじゃねーか」
驚き、少し固まったがすぐにコクリとうなずいた彼女が
「私、まだ幽霊を祓ったことないの」
祓うために屋上に言ってたって…彼は思った。
「じゃぁどうして…」
「…いこっ!」
「…あぁ、そうだな」
ガチャ屋上の扉をあけると…やはり、いた。
ギュっと彼は真奈の手を握る
「ホシイ…ホシイ、ホシイ」
幽霊はほしい、の一言をずっとつぶやいていた。
「な…何がほしいの!?」
「ア・・・テガ…ホシイ」
「相手・・・?話し相手がほしいのか?」
「ホシイ、ソレガホシイ・・・」
それがわかった彼らはその幽霊と話した。ずっといろいろなことを。
すると幽霊は消えていった
それを見届けた真奈が…
「琢磨君、私あなたのことが―――――――」