春の始まり
プロローグ
暖かな春の日差しが、レースのカーテン越しに部屋の奥まで差し込み、柔らかく木製の床やギターケースの表面に影を落としていた。
僕、白瀬蓮はまだ眠気に包まれたまま布団の中で丸まっていたが、カーテン越しの光に少しずつ意識を引き戻され、まだ夢の世界に浸りたいという気持ちを必死で押さえ込む。
壁の時計の秒針が静かに刻む音が、寝ぼけた頭に小さく反響し、布団の中の僕に微かなリズムを刻む。
枕元に置かれたギターケースに自然と視線が向く。
始めて一ヶ月も経たないギターはまだ指先に馴染まず、弦を押さえるたびに小さな痛みが走る。
「……今日はFコード、鳴るかな」
小さく呟く。胸の奥で期待と不安が混ざり合い、どちらかが勝つわけでもなく、じわじわと心を締め付ける。
窓の外の桜の花びらが、朝の光に照らされて淡く輝きながらひらひらと舞う。花びらの影が床に落ち、わずかに揺れる様子を見ていると、不思議と心が少し落ち着く。
背後から妹の白瀬凛花の元気な声が飛んでくる。
「お兄ちゃん、もう起きてる?」
茶髪のウルフカットの髪が肩で軽く揺れ、くりくりとした瞳で僕を見つめる。
「うん、今起きたところ」
布団を跳ねのけ、木の床に足を下ろす。朝の光を受けた床は少し温かく、冷たい空気に溶け込むように柔らかく僕の足を包む。
凛花はぴょんと跳ねて僕の横に立ち、にやりと笑った。
「ねえ、お兄ちゃん、今日から高校生だよ! ドキドキしてる?」
「少しだけ……」
「えー、少しだけ? 本当に? もっとドキドキしてるんじゃないの?」
「いや、そんなことないよ」
鏡に映る自分の顔はまだ幼さを残していて、緊張の色がうっすらと浮かんでいる。
でもFコードさえ押さえられれば、部活で弾く曲も楽しめるはずだと、胸の中で小さく自分を励ます。
凛花は髪をくしゃくしゃにしながら、軽く僕の腕に触れる。
「お兄ちゃん、昨日はギター練習した?」
「したよ、でもFコードがまだうまくいかなくて」
「ふーん……それじゃ、今日の練習は私も見てあげるね!」
小さな手の温もりが、朝の緊張をほんの少し和らげてくれるようだった。
階下からは朝食の香りがふわりと漂ってくる。
焼きたてのパンと淹れたてのコーヒーの香りが混ざり、朝の冷たい空気をほんのり温めている。
凛花は玄関で靴を揃えながら、からかうように声をかける。
「お兄ちゃん、Fコード、今日は完璧にしようね!」
「うるさい……」
赤くなりながらも、少し笑みがこぼれる。指先の痛みやコードの響きを思い浮かべ、胸が小さく弾む。
「昨日の夜、練習してたでしょ?」
「うん、ちょっとだけ」
「じゃあ今日こそはきっと鳴るよ!」
テーブルの上にはジャムやバター、コーヒーカップの縁の小さな水滴まで、光を反射してきらきらと輝いている。
朝食を取りながら、凛花はふと窓の外を見上げる。
「春って、なんだか気分が上がるね。学校も新しい友達も、楽しそう」
「うん、でも少し緊張するよ」
「えー、緊張してるの? お兄ちゃんでも?」
「うん……やっぱり少しね」
「ふふ、そうだよね。でも大丈夫、お兄ちゃんならきっと上手くいくよ」
僕はその言葉を聞き、少しだけ背筋を伸ばす。確かに新しい環境は不安もあるけれど、同時に小さな冒険のような気持ちも湧いてくる。
「高校生活頑張ってよお兄ちゃん」
凛花は嬉しそうに笑い、僕の肩をぽんと軽く叩いた。
制服に着替え、鏡の前で髪を整える。
リュックを肩にかけ、玄関のドアを開けると春風が頬を撫で、心の奥に小さな緊張とわくわくを残して通り抜ける。
桜並木の下、舞い散る花びらが地面に薄いピンクの絨毯を作り、光を反射して柔らかく輝く。
小鳥のさえずりや遠くの子どもたちの声が耳に届き、通りの静けさにリズムを添える。
凛花は楽しそうに肩を叩き、笑顔を見せる。
「お兄ちゃん、桜の花びら、捕まえてみようよ!」
「うーん、どうかな……」
指を伸ばして花びらを掴もうとするが、風に吹かれた花びらはひらりと舞い、簡単には手に収まらない。
「……うまくいかないな」
「ふふ、見てるだけでも綺麗だよね。」
風に揺れる桜の枝や、木漏れ日が舞い落ちる花びらの影を目で追うだけで、何だか少し楽しい気持ちになる。
玄関を出る前に、僕は部屋に置かれたギターケースにもう一度視線を向ける。
ケースの角に小さな傷がいくつかついていて、僕の不器用さを象徴するように見えるが、同時に昨日の練習の跡でもあり、少し誇らしい気持ちにもなる。
「今日は、ちゃんと鳴るかな……」
指先を軽く押さえながら朝と同じことを呟き、胸の奥に小さな期待がふくらむ。
通学路に向かう途中、路地の角から差し込む光がアスファルトの小さな凹凸を照らす。
歩道のレンガはまだ朝露で湿っていて、靴底に軽く冷たさを伝える。
琴音が隣で歩きながら、軽く手を振って挨拶する。
神楽琴音とは幼馴染の黒髪ロングのめっちゃ美人な女の子だ。どれほど美人かと言われたら中学生のころに何度もモデルのスカウトが来ていたくらいだ。しかも美人なだけでなくスタイルも抜群に良く何人、何十人もの男子を虜にしてきた。僕もその一人である……と言いたいところだが恋ごころを持ったところで振られるオチなのでいつのまにか恋愛感情は皆無とは言えずとも他の男子達よりは圧倒的に低いだろう。
「おはよう、蓮」
「おはよう」
「昨日、ちゃんとギター練習した?」
「うん、少しだけ……でもFコードがまだうまくいかなくて」
「そっか、私が教えてあげるね。ほら、こうやって指を置いて……」
琴音は空中でやってみせた。
「そうそう。いい感じ……あっもう少し角度をこうした方が……」
「琴音ってギターやってたの?」
「全然やってないよ。中学生の頃に音楽の授業で少しやったくらい。それに蓮がギターやるって言ってたから少し勉強したくらいで。」
僕のためにギターの勉強してくれていたことに少し驚いた。でも不思議とその驚きの気持ちは収まっていった。そういえは琴音は人のために全力になれるそんな子だったなと思い出した。
「ありがとう」
僕がそういうと彼女はキョトンとした表情で言った。
「ん?別にお礼を言われるようなことをした覚えはないけれど?」
「僕のためにこんなにも時間をかけてくれてありがとうってこと」
すると彼女の頬をほんのりと赤くして言った。
「どういたしまして」
彼女の声は朝の静かな空気にすっと溶け込むようで、僕の心をほんのり温めた。ギターのパートを担当でもないのに僕よりも上手くこなす彼女は凄いなと改めて感じた。
空にはほんのり霞がかかり、遠くの建物の輪郭が柔らかくぼやける。
風に揺れる桜の枝が、通学路を歩く僕たちの影とともにゆらゆらと揺れ、舞い落ちる花びらは頬にふわりと触れる。
「ねえ、蓮、花びらって捕まえられると思う?」
「うーん……うまくいかないかも」
「ふふ、捕まえられなくても綺麗だからいいよね」
春の匂い、花の香り、そして少し湿った土の香りが混ざり合い、通学の単なる道のりを特別な時間のように感じさせた。このやりとりに少しデジャヴを感じだが気のせいということにして放っておこう。
歩道脇の小さな花壇には、チューリップやスイセンが色鮮やかに咲き、春の光を浴びてゆらゆら揺れている。
小さな蜂が飛び回る音や、風に揺れる花の葉が擦れる音も聞こえ、まるで朝の街全体が優しく生きているように感じられた。
僕は無意識にギターケースの重さを肩に感じながら、今日の練習でFコードをきれいに鳴らせるかを思い巡らす。
凛花と別れる瞬間、彼女は元気に手を振る。
「じゃあね、お兄ちゃん、今日も頑張ってね!」
「うん、頑張るよ」
「絶対うまくいくから、信じてる!」
朝も同じようなやりとりをしたなと思いながら凛花に手を振る。
視界の端で小さく揺れる凛花の笑顔を見送り、僕は深く息を吸い、琴音と二人で歩き始めた。
桜並木の向こうへ続く通学路は、朝の光を浴びてやわらかく輝き、風が吹くたびに花びらがふわりと舞い上がる。
足元に広がる淡い絨毯を踏みしめながら歩くと、靴底に残る感触がまるで今日一日の始まりを告げる合図のように思えた。
途中、琴音がふと立ち止まり、少し首を傾げて言った。
「ねえ蓮、まだ時間あるよね? ちょっと寄り道しない?」
「寄り道?」
「うん、公園。昨日から考えてたんだ。少しでもいいから、外でギター弾いてみない?」
唐突な提案に一瞬迷ったが、肩にかかるギターケースの重みが答えを急がせた。
弾きたい気持ちはずっと胸の奥でくすぶっていたのだから。
「……いいよ。試しにやってみようか」
「よし、決まり!」
僕と琴音は桜並木の道から外れ、緑に囲まれた小さな公園へ足を踏み入れた。
そこは朝の光に包まれ、まだ人の気配がほとんどなく、ブランコや滑り台は静けさの中に取り残されたようにただ風に揺れていた。
花壇には色とりどりの花が咲き誇り、花びらについた朝露がきらきらと光を反射していて、それを見ているだけで胸の奥まで洗われるような感覚になる。
ベンチに腰を下ろし、僕はゆっくりとギターケースを開いた。
中から取り出したギターは、まだ新品に近いはずなのに、ヘッドの部分やボディの縁に細かな傷がついていて、練習で必死になった時間の痕跡を物語っている。
琴音は横に座り、長い黒髪を耳にかけながら僕の手元を覗き込むようにして言った。
「蓮、まずはFコードからやってみよ」
「うん……」
僕は深呼吸をして、慎重に左手をネックに添えた。
人差し指で六弦すべてを押さえる瞬間、指先にじんとした痛みが走る。
それでも構わずに弦を押さえ込み、右手で軽くストロークをした。
ポロン……ビィン……ジャラリ……。
途切れ途切れの音が空気を震わせ、公園の静寂に溶け込む。
失敗した音が耳に残るけれど、それでも自分の指から確かに音が生まれたことに、わずかな誇らしさを覚える。
「惜しい! でもさっきよりきれいに鳴ってる」
「ほんとに?」
「うん、私が保証する」
琴音はそう言って、少し微笑んだ。
その笑顔は柔らかな朝の光と同じくらい眩しくて、僕の胸の奥にこわばっていた緊張をゆっくりと溶かしていく。
僕は頷き、もう一度指を置き直した。
ちょうどそのとき、風に揺れた枝から桜の花びらがひらりと舞い落ち、ギターの弦に静かに落ちてきた。
その瞬間、音を出す前から胸が高鳴った。
花びらが乗ったままの弦をそっとかき鳴らすと、かすかに揺れる花びらと一緒に和音が広がり、朝の公園を満たしていった。
不完全で少し濁った音色ではあったけれど、その響きは僕の心を強く揺さぶった。
「ね、今のすごくよかった」
琴音は僕の手元を指差しながら、熱を込めて言った。
「指がちゃんと押さえられてるし、前より音がつながって聞こえるよ」
「そうかな……でもまだ濁ってる気がする」
「濁ってても大丈夫。最初はみんなそうだから。それに、努力してる音って、ちゃんと伝わるんだよ」
彼女の言葉が心に沁みた。
僕は視線をギターの弦に落としながら、もう一度だけFコードに挑戦した。
指先に走る痛みを気にしないようにして、強く、でも丁寧に押さえる。
右手を振り抜くと、今度は少しだけ澄んだ音が返ってきた。
その音に合わせて、桜の花びらがまたひとひら舞い降りる。
光を透かして落ちる薄い花弁が、音に導かれるように揺れているのを見て、胸が不思議な感覚で満たされた。
音と景色が一つになったようで、ほんの一瞬、世界が自分のために流れているように思えた。
「……今の、すごくきれいに鳴ったよね」
「うん、ちゃんと聞こえた」
「やった!」
思わず笑みがこぼれる。
指先の痛みなんてどうでもよくなるくらい、嬉しい瞬間だった。
琴音はその笑顔を見て、くすっと小さく笑った。
「やっぱり音楽っていいね。努力した分だけ、ちゃんと返ってくる」
「うん……そうだね」
「これからも一緒に練習していこ。私もまだまだだから」
琴音レベルでまだまだなら誰もできなくなってしまうが。現に彼女は彼女の担当のキーボード(ピアノ)だけでなくギター、ベース、ドラム、それだけでなくヴァイオリン、フルートなど何の楽器でもそうなくこなす。ピアノに関してはラ、カンパネラやエチュード10ー12(革命)も一ヶ月ほどで弾けてしまう。ただ、彼女のその言葉に胸が少し熱くなるのを感じた。
僕はギターを膝に抱えたまま、もう一度桜の枝を見上げた。
朝の光が花びらを透かし、風に揺れる影が僕と琴音の足元を柔らかく染める。
その光景は、ただの公園の一幕でありながら、何か大切な記憶の始まりのように思えた。
公園でギターをケースに戻した後、僕は少し立ち止まり、周囲の景色に目を向けた。淡い春の光が枝先の桜の花びらに反射し、花びら一枚一枚が透き通るように輝いている。風が通り抜けるたび、花びらはふわりと舞い、地面に敷き詰められたピンクの絨毯を静かに揺らす。空気は少し冷たく、頬に触れると肌が微かにひんやりするが、同時に朝の清々しさが胸いっぱいに広がる。土や草の香り、桜の香り、遠くから漂うパン屋の焼きたての匂い、通りを歩く人々の服や髪からほのかに感じられる香りが混ざり合い、春の朝が五感に満ちているのを実感する。
琴音は僕の隣で、黒髪を指で整えながら、ギターの練習を振り返って微笑んでいる。指先の動きや押さえ方を思い返しながら、小さくため息をつくたびに、練習の手応えがまだ体の中に残っているのを感じる。彼女の表情や仕草は柔らかく、朝の光を受けて一層穏やかに見える。僕の胸の奥に、今日も何か新しいことが始まる予感がじわじわと膨らむ。
通学路に出ると、少し前方に黒縁の眼鏡をかけた少女が立っている。ポニーテールにまとめた髪が風に揺れ、指先でスマートフォンの画面を触る仕草はどこかぎこちなく、でも真剣で、朝の静かな空気にほんのり溶け込んでいた。太陽の光が柔らかく彼女の顔に当たり、眼鏡越しの瞳が反射して小さく光る。
僕たちの視線が合いそうになり、少女は慌てて視線を下げる。空気の中で一瞬だけ時間が止まったような気がして、風の音や遠くで鳴る自転車のベル、歩道に響く靴の音が、いつもより鮮明に聞こえた。琴音は柔らかく微笑みながら手を振る。少女も小さく会釈し、控えめながら微笑みを返す。
「おはよう」
琴音の声が空気に溶け込むように響いた。その微笑みはとても輝いていた。初めて会った人にもこうやって話しかけられることに感心しながら僕も小さく頭を下げる。
「おはようございます」
少女はかすかにうなずき、眼鏡の奥の瞳にわずかな緊張を漂わせながら、少しほっとしたような表情を見せた。その動きは、僕の視界に自然と刻まれる。
「えっと……私は、星川です。……星川紗夜です。よろしくお願いします」
ぽつりと自己紹介する声は控えめだが、どこか真面目で、落ち着いた響きを持っていた。僕は軽く頭を下げ、琴音も微笑む。
「神楽琴音です。よろしくね」
「白瀬蓮です。よろしくお願いします」
自己紹介が済むと、星川さんは少し安心したのか、眼鏡を整え、周囲の景色をちらりと眺める。通学路の舗装の小さな凹凸や木々の影、舞い落ちる桜の花びらが、彼女の視線の先で柔らかく揺れ、朝の光に反射して淡く輝く。その様子は、静かに流れる時間の中で、僕の胸に小さな落ち着きを与えた。
琴音が小さく声をかける。
「星川さん、今日は入学式だね」
「はい……緊張します」
「そっか……私も新しいことは少しドキドキするよ」
「そうですね……なんだか落ち着かなくて」
星川さんは顔を少し赤らめ、手で髪を触る仕草をする。小さな仕草が、朝の静かな風景の中で柔らかく映える。僕はその様子をちらりと見て、朝の光や花びらの揺れとともに、頭の片隅に小さな記憶として刻む。
通学路の両脇には花壇や商店、カフェのテラス席があり、朝の忙しさがゆったりとした空気と混ざる。風に揺れる枝の影が歩道に落ち、花壇の花々は柔らかく光を反射してゆらゆらと揺れる。ポピーやガーベラ彩る小さな花壇の色が、春の光の中でまぶしく輝き、足元で小さな命が息づいていることを感じさせる。
「今日が、初めての高校生活だね」
琴音が軽く声をかける。
「はい……どんな一日になるか、まだ想像もつかないです」
「大丈夫、きっと楽しいよ」
僕は小さく頷き、胸の奥に小さな期待を抱く。風に揺れる桜の枝や、通りの人々の足音、遠くで聞こえる自転車のベル、鳥のさえずりが、まるでこの瞬間を祝福するかのように耳に届く。
桜の花びらが舞い落ち、柔らかく地面を覆うピンクの絨毯に影が揺れる。風に吹かれて花びらが頬に触れる感覚、枝の揺れに伴う光の変化、通学路の木漏れ日が足元に落とす淡い模様……すべてが春の朝を特別なものに感じさせる。
星川さんは少し間を置き、ぽつりと話す。
「……新しい学校って、なんだか緊張しますね」
「うん、僕も少し緊張してる」
琴音も柔らかく微笑む。
「でも、大丈夫。少しずつ慣れていけるよ」
通学路を歩く間、風が桜の枝を揺らし、花びらが舞い落ちる。通る人々の声や足音、遠くで遊ぶ子どもたちの声も重なり、春の朝の空気は柔らかく、温かく、かすかな期待感で満ちていた。僕の胸に、Fコードの練習で得た小さな達成感が残り、心の中に今日という一日へのわくわくとわずかな緊張が入り混じる。
校門が見えてくる。桜の花びらが舞い落ち、朝の光に反射して柔らかく輝く中、僕たちは新しい一日への第一歩を踏み出す。星川さんの眼鏡越しの視線や、少し照れくさそうな仕草が、通学路の景色の中で柔らかく揺れる。その瞬間、春の空気と光の中で、僕の胸に小さな勇気が芽生えるのを感じた。




