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ep. 5 忘却の呪い、凝縮する過去②

「気を付けろ、沙羅、中にもいる」


 公民館の台所に蛇頭人が一体。上下二連散弾銃を構えてぐるぐる徘徊している。私は曲がり角に隠れ、そいつが通りかかるのを待った。ヒタヒタという足音が接近してくる。


 ――落ち着け、さっきやったようにやるんだ。


 ヤツが通りかかった。と同時に飛び出し、銃身を掴んで銃を撃てないようにホールドする。壁に押しつけ、斧をそいつの左肩に思い切り突き立ててやる。銃持ちがギャッと短い悲鳴を上げてその場に力なく座り込んだ。


 死んだか。私は散弾銃を奪い、パカッと折って残弾を確認。どちらにも弾が込められている。これはいい。


 銃を構えてその場を離れようとしたとき、わずかだが銃持ちの腕がピクッと動いたのを、私の目は見逃さなかった。もう戦えなそうだが、しかし、念には念を入れておきたい。私は肩に刺さった斧を抜き、脳天に突き刺して息の根を止めてやった。


 それとほぼ同時に、新手の三体が公民館の窓ガラスを突き破って侵入してきた。パリンという音と、割れたガラス片が床に散乱する音が響く。


 私は銃を構えて角に隠れ、蛇頭人を待ち伏せ。日本刀持ちが通りかかるのを見計らい、至近距離で頭に散弾の雨をぶちまける。悲鳴を上げる間もなく蛇頭人の頭が弾け、血や脳漿などがべったりと壁にこびりついた。


 残った二体が私に気づき、迫ってくる。銃を構え、手前の一体に照準を合わせ、引き金を引く。さすがは散弾銃、閉所での威力は抜群だった。飛び散った無数の金属の弾丸は、蛇頭人の頭に覆い被さるようにして破壊し尽くした。


 だが、これにて散弾銃は撃ち切り。残った一体は、閉所で竹槍は不利と判断したのかその場に捨て、懐からドスを取り出して構えた。私も散弾銃を捨て、特殊警棒を抜いて構える。


 数刻の睨み合いの後、蛇頭人が動いた。ドスをしっかりと握って突進してくる。私も負けじと突撃。ドスと警棒の激しい攻防が発生する。刃と警棒が何度もぶつかり、火花が散る。


 ドスの刃先が私の二の腕と肩を掠めた。服が破れ、皮膚が裂けたが、浅い。致命傷にはほど遠い。今度はこちらの番だ。


 ヒュッと警棒を振るい、ドスを持った手を打つ。が、蛇頭人も簡単には落とさない。手を打たれる直前、ヤツはドスを投げて左手に持ち替え、私の脇腹に突き立てようとした。間一髪、警棒で防御。そのままそいつの腕を掴み、捻ってヤツの腹部に突き立てる。


 蛇頭人が目をひん剥き、口から血を流して私の目を睨み付ける。私はそのまま蛇頭人を力任せに押し、壁に押しつけ、ドスを奥深くまで突き刺した。


 ドスを思い切り引き抜く。と同時に蛇頭人は腹から大量の血を吹き出し、その場にバタンと伏して絶命した。


「シロ、他に敵は?」


「いない。今のうちだ」


 私は死んだ蛇頭人からドスの鞘を回収し、刃を収め、スカートのゴム部分に挟んで仕舞う。


「ここの地下に秘密の資料室がある。こっちだ」


 私はシロに言われるままに和室に入り、指定された畳を引っぺがした。すると、そこには地下へと続く古びた階段が。


「降りてみよう」


 スマホのライトで照らし、下に降りる。下りた先には、古びた書籍や絵巻、写真などで埋め尽くされていた。私はシロと手分けして、それらを読み漁る。


 結果、以下の事が分かった。


 この村の土着神、蛇神様は、もともとは村の守り神として祀られていた。しかし、外界との交流が途絶える中で、村人達の集合思念を吸収し、より強大で排他的な存在へと変質していった。


 また、この村には人柱の風習があった。その年の豊作を祈願するための儀式として、外界から迷い込んだ旅人や、村の掟に背いた者……いなければ、処女の巫女を一人選び、心臓をくりぬいて、蛇神神社に奉納していたそうだ。


 校長室で資料を読んだときの気持ち悪さが、再びこみ上げてきた。もう分かりきったことだが、この村は異常だ。滅んでしかるべき――この世に存在してはいけない存在だ。


 だが、そんなことなどどうでも良くなるような情報が、シロから告げられた。


「沙羅、見ろ、これ。どうやら昔、この村に背いたガッツのある村長がいたみたいだぜ」


 といって、シロが資料と共に昔の写真を見せてくる。それを見て、私は目を疑った。


「え……なんで……?」


「どうかしたか?」


「私……この人を、知っている……」


「なんだと!?」


「ねえ、この村長の名前は?」


「ええと……東堂宗一郎だな。東のお堂に、宗教の宗、漢数字の一に朗」


 やはりだ。この人は、私の――


「曾おじいちゃん……」


「……マジかよ」


 その写真と共にあった資料には、次のように書かれていた。


 かつてこの村には、村民達の民意に背き、生け贄として一族郎党皆殺しにされた村長がいた。村長以外の家族はみな殺されたが、しかし村長だけが逃げ延び、行方不明のまま終わった。


「じゃあ、そうするとキミの先祖は……この村で村長をやっていたってのか。どうりで、キミから特殊な霊力を感じていたわけだ。どうりで術など使わずに、蛇頭人を殺せたわけだ。キミは……この村を狂気から開放し、成仏させるための鍵だ」


「鍵……私が……」


「ああ、そうだ。もしかしたら、キミのお母さんがこの村を気に入ったのも、偶然ではなかったのかもしれないな」


 想像だにしなかった。こんな狂気に染まった薄汚い村が、私の先祖の故郷だったなんて。それに、私が鍵だって? この村を狂気から開放――浄化して消滅させるための?


「キミのお母さんは、自然派に染まってこの村に救済を見出したんだろう。キミは、どうなんだ? この村が、楽園だと思うか?」


「こんなとち狂った思想に、救済なんて、あるはずがない」


「なら、やることは決まったな」


「ええ」

お読みいただきありがとうございます。


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