ep. 8 汝、平和を欲さば……②
少女は躊躇なく振り返り、デザートイーグルを抜いて敵の群れに向けて乱射した。轟音が木霊し、大口径の弾丸の雨が蛇守兵たちを紙くずのように吹き飛ばしていく。
あっという間に弾切れした拳銃を敵の顔面に投げつけると、少女は静かに仕込み杖を抜いた。
紅鎧蛇武者が三体、少女に斬りかかる。
だが、少女は目にも留まらぬ剣捌きで武者の大太刀をいなし、舞うような動きであっという間に三体を斬り伏せた。倒れた武者の首筋に剣を突き刺し、確実な死を与える。
さらに敵の増援が押し寄せる気配を感じ取ると、彼女は閃光グレネードのピンを抜き、敵の群れのど真ん中へ放り投げて両耳を塞いだ。
カッと強烈な閃光と爆音が起爆し、敵の視力と聴力を完全に奪う。
「目が眩んだか!?」
少女の叫びを背に受けながら、私は振り返ることなく獣道を突っ走った。
やがて霧が晴れ、見覚えのある朱色の回廊――蛇守神社へと再び侵入を果たした。前方から、待ち構えていた多数の紅鎧蛇武者や蛇守兵が怒涛のように押し寄せてくる。
「邪魔だッ!」
私はショットガンを構え、走りながら引き金を引いた。12ゲージの徹甲スラグ弾が、武者の強固な紅鎧をブリキの玩具のように貫通し、次々と血の海に沈めていく。
蛇守兵が反撃で拳銃をぶっ放してきた。私は素早く柱の陰に滑り込み、肩越しにショットガンのシェルを押し込んでリロードする。
柱の陰から身を乗り出し、撃ちながら距離を詰める。最後の一体となった紅鎧蛇武者の胸板にM4を突き立て、引き金を引いた――が、カチッと空虚な音が鳴った。弾切れだ。
私はそのままショットガンの銃身で武者を壁に押し付け、空いた右手でグロック17を抜く。鎧の隙間、兜の下から銃口をねじ込み、トドメの一発を撃ち抜いた。
奥の襖が開き、さらに蛇守兵の増援が現れる。
私は身を低くして別の柱の陰へ転がり込み、素早くM4にシェルを装填する。
横の回廊からも蛇守兵が現れ、私に向けて発砲してきた。脇腹に強烈な衝撃が走る。だが、防弾仕様のブレザーが弾丸を食い止め、貫通は免れた。肋骨にヒビが入るような鈍痛に顔を顰めながらも、私は立ち止まらずにグロックで応射し、巨大な神像の影へと滑り込む。
神像の影から飛び出し、迫っていた蛇守兵の先手を取る。左手で相手の拳銃を持つ手を押さえ込み、右手のグロックで脳天を正確に撃ち抜いた。
射殺した兵の死骸を肉の盾にしながら、その後ろで狼狽える兵三体の胸にグロックの弾丸を叩き込む。そのまま再び神像に隠れ、空になったマガジンを捨ててリロードを済ませた。
体勢を立て直し、回廊へと飛び出す。
前方から、紅鎧蛇武者が長槍を振り回して突進してきた。その後ろにも複数の武者や兵が控えている。私は手前の武者を盾にして奥からの射線を切りつつ、M4の徹甲スラグ弾を武者の腹に叩き込む。怯んだ隙に槍の柄を掴んで足を払い、すかさずヘッドショットを決めた。
即座に廊下脇の別の神像へ隠れ、シェルを三発装填。そのまま射撃を続けながら敵陣のど真ん中へ突っ込んでいく。
横から組み付いてきた蛇守兵の腕を関節技で拘束し、その盾を維持したまま、M4に最後の三発のシェルを押し込む。拘束していた兵の顎下にグロックを突きつけてトドメを刺すと同時に、大太刀を上段に構えた紅鎧蛇武者が斬りかかってくる。
私はM4を構え、残る三発の徹甲スラグ弾を全弾、そいつの胴体にぶち込んだ。武者が吹き飛ぶのを見届けると、私は空になったショットガンを前方の蛇守兵の顔面めがけて投げつけ、両手でグロックを構え直す。
その時だった。背後の木壁が、爆発したかのように粉砕された。
「――ッ!?」
土煙の中から現れたのは、あの忌まわしい巨漢――蛇綱力士だった。
不意打ちのタックルをもろに喰らい、私は弾き飛ばされて回廊の柵に激突する。
「また会ったな、このデブ……」
だが、今の私には防弾服と、みなぎる気力がある。私はすぐに体勢を立て直し、巨漢の腰で蠢く綱の蛇にグロックの照準を合わせた。蛇の頭部を正確に撃ち抜く。蛇はビタンと跳ね、だらりと垂れ下がった。
己の一部を殺されたことに激昂した力士が、目を血走らせて私に掴みかかってくる。丸太のような両腕が私の首を締め上げ、身体を宙に持ち上げた。
ギチギチと首の骨が鳴る。だが、私は冷静にグロックの銃口を、私を絞め上げる奴の太い腕に押し当て、引き金を連続で引いた。
肉を削られた力士が悲鳴を上げて腕を緩める。その隙を逃さず、私は力士の太い腕を踏み台にしてよじ登り、巨漢の肩に飛び乗った。
真上から、力士の脳天めがけてグロックを三発撃ち込む。脳漿を撒き散らし、地鳴りを立てて力士がその場に崩れ落ちた。
私は飛び降りてその場を離れようとしたが、脳みそをぶち抜かれたはずの力士の生命はまだ尽きていなかったようだ。がばっと勢いよく状態を起こし、咆哮をあげる。
私は冷酷に振り返り、奴の眉間を狙ってトドメの一発を撃ち抜いた。巨体は再び仰向けになり、完全に沈黙した。
硝煙と血の匂いが立ち込める中、私は弾倉を確認し、乱れた呼吸を整える。
朱塗りの回廊の突き当たり。荘厳で、ひときわ巨大な観音開きの扉が、私を待っていた。
――ついに来た。
私はグロックをしっかりと握り直し、蛇神が待ち受ける最奥の部屋の前に立った。タイムリミットは、もうそこまで迫っている。
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