表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
視える宮廷女官 霊能力と薬の知識で後宮の事件を解決します!  作者: 島崎紗都子
第5章 危機一髪皇帝暗殺を阻止せよ
37/51

1 不吉な予知

「はい! 今日で全部終わり。この部屋もすっきりしたものよ。これでぐっすり眠れるはず。政務に子作りにしっかり励んでちょうだい」

 腰に手をあて、蓮花は満足そうに頷く。

 赦鶯陛下の宮殿に巣くう無数の霊たちもすべて処理した。

 蓮花は天井を見上げる。


「天井の模様も、はっきりと見える」

 この部屋に初めて入った時は、重苦しい空気に押しつぶされそうになって息が苦しかったが、今は空気が新鮮で淀みがない。

 どんよりと黒いもやがかかったような気配が漂っていたが、それも消えた。蓮花の隣に立った赦鶯も一緒になって天井を仰ぐ。


「この部屋の天井はこんなに高かったのかと改めて思うな。それに明るくて広い。差し込む陽の光が眩しいくらいだ」

「体調はどう?」

 二人っきりの時はすっかりため口だ。

 最初はそれなりに一応気を遣っていたのだが、おかしな敬語はかえって気持ちが悪いと言われ、砕けた口調となり、最後にはため口となった。


 時折、赦鶯付きの太監が渋い顔で睨んでくるが、陛下が堅苦しいのはやめろと言うのだから仕方がない。

「体調はいい。今まで頭痛に悩まされていたのが嘘のようだ」

「いろんなものを引き寄せてたからね」

「おまえの処方した薬湯が効いたのもあるだろう」

「あたしが煎じたのは、別に特別なものでもなんでもないけど」

「いや、煎じた者がよかったのだ」

 赦鶯はにこりと笑い蓮花に向き直る。


「皇后のことにもじゅうぶん手をつくしてくれた。おまえには感謝している。褒美をとらせよう。何がよい?」

 蓮花はにんまりと笑った。

 褒美を頂けるのはありがたい。

 それを元手に故郷に帰ったら何かやろうと思っていたからだ。

 そうねえ、と考えるように蓮花はあごに手をあてる。


「よし、貴人に昇格させてやろう」

「それはけっこう。何度も言ったでしょ。あたし、ここを去るんだって」

「本当に去るのか? こんなにもおまえのことを大切にしているというのに」

 蓮花は鼻で嗤って肩をすくめた。

「大切にするなら皇后さまや皇子さまを大切にしてあげて。あたしには無用」

「おまえを後宮から出さないと言ったら、どうする?」

 蓮花はにたりと意味ありげな笑いを口元に刻んだ。

「じゃあ、またこの部屋いっぱいに悪霊を呼んでやる。歴代の皇帝のように早死にする?」

 それは勘弁してくれと、赦鶯は顔をしかめた。


 こうして陛下に気にかけて貰えるのも、あたしが陛下の周りにいない珍しいタイプだから。

 飽きられたら、寵愛を失った妃のように忘れられてしまうのだ。


「そうだ。来月秋の狩りがある。おまえも来い。妃たちも集まり天幕の中で狩りを見学するのだ。ご馳走も出るぞ。うまいものが食べられる」

 それを聞いた蓮花は、じっと赦鶯を見上げた。

「だめ……」

 蓮花は知らず知らず声をもらした。

「狩りに行ってはだめ。殺される」

「おいおい、滅多なことを言うな」

「本当よ! あんた狩りの日に殺されてしまう。矢に打たれて倒れている姿が視えた」


 赦鶯が不機嫌な表情を浮かべたことに太監が気づき、蓮花の元にやって来る。

「芙答応さま、そろそろ戻りましょう」

 赦鶯が怒り出す前にと気を利かせ、蓮花を外に連れ出してくれた。

 皇后の住む永明宮まで太監に送り届けて貰った蓮花の前に、一颯がやってきた。


「どうしたのだ?」

「それが、蓮花さまが……」

 太監は先程の出来事を一颯に話して聞かせた。それを聞いた一颯は深刻な顔をする。

「蓮花が何かを感じ取ったのなら、それはこれから起こる未来予知だ。陛下には僕が話してみよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ