表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/51

11 一番の寵妃?

 永明宮に植えられた、庭の花に蓮花は水をあげていた。

 皇后の出産まで、いよいよあと少しと迫ってきた。

 そんな中、皇后の手前、周りは落ち着いた様子を見せながらも、水面下では慌ただしい準備が進められていた。


「妃になったというのに、花に水やりとは相変わらずだな」

 背後からの声に蓮花は振り返る。少し離れたところに一颯が立っていた。

「なんか用?」

「素っ気ないな」

「見ての通り、忙しいんだけど」


「そんな雑用など侍女にやらせればいいものを。おまえは陛下の一番の寵妃なのだろう」

「やめてよ。あたしが妃になった経緯、あんただって知ってるでしょう。とにかく、あたしはあたし、何になろうとも変わらないから」

「安心した」

「なにが?」

「いや、なんでもない……不思議なものだな。おまえには普通の人にはみえないものが視えて聞こえる」

「まあ、何も感じない人にしたら、胡散臭いでしょうね」

「胡散臭いとは言ってない。だが、おまえが皇后の側についてくれて本当に感謝している。と同時に、今さらになっておまえをここに連れてきたことを後悔もしている」

「今さらだよね。そう、それよりも賊は見つかったの?」

 蓮花は水やりの手を止めた。


「いや、それが……」

 歯切れの悪い一颯の言葉に、蓮花は眉根を寄せる。

「皇后もお子が産まれるし、あたしもそろそろここを出たいんだけど」

「ああ、分かっている……少々手こずっている。すまない」

「手こずる? 僕に任せておけって大口叩いたのは誰?」

「本当にすまない」

 そう言って、一颯は蓮花の手に菓子の包みを手渡した。


「あのねえ、前から思ってたけど、お菓子で誤魔化そうとしてない? まあ、ありがたく貰っておくけど。ねえ、一つ聞いていい?」

「なんだ?」

「陛下と皇太后さまって仲がよくないの? なんか会話がぎこちない感じがしたから」

 一颯は苦笑いを浮かべる。


「おまえも感じたか。ああ、陛下と皇太后は血が繋がっていない」

「やっぱり、そうなんだ」

 血が繋がっていないと聞いて驚くことではない。

 他の妃が産んだ子を育てるなどよくあることだ。

 血が繋がらなくても、自分が育てた子が皇帝になれば、その母は皇太后になる。

 そういうことなら、陛下と皇太后がどこか互いに距離を置いた関係なのも納得がいく。


 そこへ、明玉が一颯の姿を見かけ声をかけてきた。

「あ、一颯将軍、いらしていたのですね。ぜひ皇后さまに会っていってください」

「もちろん、そのつもりだ」

 明玉に導かれ、一颯は皇后の元へと向かう。

 一颯の後ろ姿を見た蓮花は、なぜか胸騒ぎのような嫌な予感を覚えた。

 それからすぐに、皇后は皇子を無事出産した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ