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3話

 私が家へ戻ると、緊急で家族会議が開かれた。

 お父様とお母さまは勿論、お兄様や弟、妹たちまで全員参加だ。

 それなりに遅い時間だったけれど、誰も文句を言わずに集まってくれた、


「……そうか、そんなことがあったのか」


 何とか今日起きてしまったことを全て話し終えると、お父様が重い口を開いた。

 失望、しているのかな。

 伯爵家としては、公爵家であるユーリスと結ばれるのはとても望ましいことだろう。

 より上位の貴族と強い繋がりを持てるというのは、貴族界において非常に大きな意味を持つ。

 両親も私とユーリスは相思相愛だと思っていただろうから、きっとがっかりしているに違いない。

 そう思って私が震えていると、お父様が立ち上がって私の傍によってきて、ぽんと頭に手を乗せてきた。


「それは辛かっただろう。すまなかったな。そんな大事な時に傍にいてやれなくて」


 そういって、私の頭を撫でてくれた。

 すると私の緊張が解け、一気に力が抜けていった。


「しかし、大切な娘をそんな簡単に捨てるとはあまりに不誠実だ。いくら公爵家と言えど、一言くらい言ってやらんと気が済まん」


「ええまったくね。母としても黙っていられませんわ」


「お父様、お母様。でも――」


「こうなれば婚約などこちらからも願い下げだ。辛い思いをさせたな、シェリル」


「いいん、ですか? 公爵家との、大切な婚約。台無しにしちゃって……」


「娘より大事なものはないだろう。そんなことは気にするな」


 そう言われて、抑えていたはずの涙がまた出てきてしまった。

 そっか。私、捨てられちゃっても受け入れてもらえるんだ。

 何より大事だったはずの婚約者に捨てられても、それ以上に私を大切に思ってくれる家族がいた。

 そのことが嬉しくてたまらなかった。


「幸いシェリルには魔導の才能があるからな。シェリルの開発した精霊炉(せいれいろ)はやがて王国に欠かせないものとなるだろう。兄ではなく一人の男として考えると、私ならば決して縁を切りたくはないがな」


「そうそう。姉さんは凄いんだから、焦る必要なんてないんじゃない?」


「きっとこれからまたお姉さまに相応しいお相手が見つかりますよ!」


 兄弟たちにも慰められてしまった。

 そう。私は根っからの魔法及び魔導の研究者。

 子供のころから夢のような現象を引き起こせる魔法が大好きで、その魔法を誰でも扱える技術として活用するすべを探る魔導を極めようと頑張ってきた。

 その影響でずっと研究室に引きこもっていたのが、私が良く陰鬱な女と言われる所以だ。


 精霊炉――それは私が今研究している万能エネルギーだ。

 今のところは石。いや、結晶の形をしているが、それは決まった形ではない。


 一つの魔法を補助し、維持するためだけの魔導具は昔から存在していた。

 つまり火属性の魔法を使って火をおこせば、魔導具に蓄積された魔力がそれを維持させ、料理に使用できる。

 光属性の魔法で発光させれば魔導具の力でそのまま照明として活用できる。

 だからこそ貴族に仕えるような使用人には、このあたりの基礎的な魔法を扱えることが絶対条件となっているのだ。


 でも、もし魔導具の力だけで簡単に火を起こせたり、光を発生させたりできたとしたらどうだろう。

 魔力さえ供給できれば何の技術を持たなくても簡単にその魔導具を扱うことができる。

 ――魔法が使えなかったとしても、不当な差別を受けることがなくなる。


 専用の魔導具にこの精霊炉を繋げば、魔法を一度発動しなければならないという無駄な工程を省いてあらゆることができる。

 まだ表に出せるほどのレベルじゃないけれど、この精霊炉を貴族、平民問わず王国に住む全員にいきわたらせることが私の夢なんだ。


「うん。ありがとう。頑張るよ」


 ――でも、私は研究者である以前に貴族令嬢だ。

 その役目はしっかりと果たさなければいけない。

 いつまでも、この家でのんびりしているわけにはいかないんだ。


 だけど、今はこれからのことを考える余裕もなくなってしまった。

 ユーリスと婚約を結べた時は、ようやく私も一人の女として立派な大人になれそうだと喜んでいたけれどなぁ。

 彼も私の夢に賛同してくれたし、協力も惜しまないと言ってくれてたのに。

 全部。全部嘘になっちゃったね。



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