2話
突然すぎる婚約破棄宣言。
私の心が急速に冷えていくのを感じた。
不思議と頭は冷静に回っていて、表情が死んでいくのを感じ取れた。
「本当に、私との婚約を破棄するんですか?」
「……ああ」
「うふふふふふ!! 当然じゃない! 貴女のような根暗女よりも、この王女たる私がユーリスの隣にいる方が相応しいに決まっているじゃない」
「――ユーリス。私、あなたのこと、心の底から好きだったのに。もう、私の顔も見てくれないの?」
「…………」
ユーリスは私から目をそらして、まっすぐこちらを見ようともしない。
その隣では胸をあてるように腕に抱きつく王女のにやけ顔があった。
「いくら貴女がすぐれた魔導技術を持っていようが、一生を共にする婚約者にはまた別の資質が必要に決まっているじゃない。貴女はそれを怠ったのだから」
資質。資質って何?
大好きな人の隣にいるのに、気持ち以外に何がいるの?
分からない。そんなの分からないよ。
……でも、これだけは確かに分かる。
私では、もうユーリスの隣に立つことができない。
ユーリスは、私を捨てたんだってことが。
「……分かった。婚約を、破棄しよう。そうしたいん、だよね?」
「……ああ」
私はその返事を聞いて、くるりと振り返った。
そしてそのまま、ゆっくり歩きだした。
周囲がざわつく。でももう、何言ってるかなんて聞き取れないや。
「――シェリル君!」
最後に、彼らの者ではない声で私の名前を呼ばれたけれど、聞こえないふりをして、私は走って会場を飛び出した。
どうして。どうしてこんなことになったの?
言ってたじゃない。
例え周りからどんな評価を受けようとも、俺はお前が良いと。
でも、嘘だったんだね。
あなたのこと、ずっと信じていたけれど、こんなに簡単に私のこと、裏切れるんだ。
つらい。悔しくて涙が止まらない。
逃げ出すようにパーティー会場を後にした私を、誰も追いかけてはこなかった。
どうしよう。これから私、どうすればいいの?
でももう、こんな問いにやさしく答えてくれる人は隣にいない。
ユーリスがいるならとお付きの侍女も連れてきていないから、孤独に歩くことしかできない。
私は一人、夜の街灯に照らされながらとぼとぼと家へ帰ることになった。
一人で家に帰ってきた私に、家族はとても驚いた。
何があったのかと聞かれたけれど、泣いたまま何も喋れない私を見て、それ以上の追及をせずに中へ入れてくれた。
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