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17話

 ライトハルト殿下がお帰りになったその夜、私は一人で研究室にこもっていた。


 ああ、こんなにも興奮したのはいつぶりだろう。

 まさか私以外に精霊炉を作り出せる人がいるとは思わなかった。

 

 どれほど素晴らしい発見であっても、どれほど優れた技術であっても。

 自分以外の人がそれを再現できなければ、それは「人の技術」ではなく「神の奇跡」のようなものに過ぎない。


 だがしかし。

 今日、ライトハルト殿下は私の目の前で、私が生み出した技術を再現してみせた。

 つまり今、この瞬間に精霊炉は「私だけの技術」では無くなったのだ。


「しかもこれ……」


 一枚の紙を手に取る。

 乱雑な字で書かれたそれは、私が殿下から聞いた言葉を簡潔にメモしたものだ。


「要は魔法の多重起動の応用で、その一つを自分から切り離してこの石にーー」


 私が殿下に「どうやって精霊炉を作り出したのか」問い詰めると、殿下はやや戸惑いながらも丁寧に答えてくれた。


 抽象的で上手くイメージを伝えきれなかった私の説明とは異なり、あくまで既存の技術の応用と言った形で再現をした殿下の説明には説得力があった。


「でもその、正直なところ。これは簡単に量産できるような代物ではないです。今回はたまたま一発で上手く行きましたが、連続で同じものが作れるかは怪しいです」


 今までリディアを介して殿下のもとに渡っていた魔導具を研究した成果と、私が実際に作るところを見て。

 一か八かでやってみたら出来ただけだと殿下は言う。

 しかし殿下が分かりやすく言語化してくれたその研究成果は、間違いなく私の今後のためになる。


「例えばですが、精霊炉が一つで成している役割を複数に分割して見るのはどうでしょうか。魔力を燃やす部品、魔法に変換する部品、それを安定させる部品……それらを組み合わせてこんな感じに……」


 しかも殿下の思考はその一歩先を行っていた。

 高い技術力を有していなくても、一つ一つが簡単に作れる部品を組み合わせて同じ役割を果たせるものを生み出すという発想。


 私は心のどこかで「現に私が作れるんだから、これ以上作り方を変える必要はない」とか思っていたのかもしれないと反省した。


 ただ私が出来る理想の作り方を教えるんじゃなくて、もっと簡単に作れる方法を考えるべきだったんだ。


 ああ、そう考えたらもう頭の回転が止まらない。

 やりたい事が次から次へと浮かんでくる。

 実験もたくさんしなければならない。


 手が足りないな。

 殿下にも手伝ってもらおう。

 私はもう、彼を研究者としてのパートナーとして認めている。


 人生のパートナーになって貰うかは、まだちょっと決め切れないけれど。


 良い出会いはできた。

 陛下とリディアには感謝しなくちゃね。


 人生。

 悪い事があれば、その反動で良いこともあるんだなって。


お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お馬鹿な元婚約者に、グズグズすがりつかず前向きで建設的な主人公が素敵です。 純粋で、他者を尊敬できる第四王子も素敵! まだ15歳と言うことは、ここからグンと成長しそうなのもワクワクしますね…
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