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13話

「ふふっ、我ながらいい方法を思いついたものだわ」


 王城のとある一室。

 窓から漏れ出た夕日の光を眺めながら、第二王女リディアは頬を緩めた。

 つい先ほどまでここには愛しい弟のライトハルトがおり、彼には先ほどまでの出来事を事細かに聞かされたばかりだ。


「あんなに嬉しそうなライくんは久しぶりに見たなぁ」


 ライトハルトは今日、憧れの存在であるシェリルとお見合いをしていた。

 どうやら具体的な婚約の話にまでは至らなかったらしいが、話も盛り上がってお互いに良い感触を掴めたのか、そのことをキラキラした目でリディアに余すことなく語ってくれた。

 そもそもライトハルトとシェリルの見合い話を手引きしたのはリディアだったので彼女はその結果に満足していた。

 やっぱり、いい組み合わせだと思っていたのよね、と。


 ライトハルトは王子としては少々純粋すぎる。

 いつもまっすぐでとてもいい子だが、政治的な駆け引きや腹の探り合いなどは向いていないし、悪い貴族と関係を持ってしまったら簡単に騙され利用されてしまうかもしれない。

 だから姉としては彼の婚約についてそれなりに心配していたのだ。


 だけどシェリルなら大丈夫だ。

 優れた才能とそれを活かし努力できる女の子。

 彼女は決して誰かを利用して成り上がろうなんて思うタイプではないし、そもそもそんなことを考える必要がないくらい、既にこの国にとって重要な存在なのだから。

 だからこそ安心して弟を任せられると信じている。

 それに――


「ライくんなら今のシェリルにとって必要な存在になれるはず、だからね」


 バカ姉(ナディア)に婚約者を弄ばれ、婚約破棄に至ってしまったシェリル。

 彼女のことだから、こんな目に合うくらいだったら一生引きこもって研究していた方がマシだとか、自分には幸せな結婚なんてできるはずがなかったとか考えているに違いない。

 だからまっすぐに彼女のことを見てあげられるであろうライトハルトとの婚約はシェリルにとって悪いモノとはならないだろう。


 兄たちではダメだ。

 恐らく彼らではシェリルのことを「我が国にとって必要な魔導研究者」としてしか見れないだろう。

 あくまで彼女を繋ぎ留めておくための婚約でしかないと。

 決して婚約者を悪いようにするような人たちではないが、そんな婚約を傷心のシェリルにさせたくはない。


「後は実際に付き合ってみて上手く行くことを祈るだけ、ね。問題は……こっちね」


 そう言ってリディアは机から1枚の写真と紙を拾い上げる。

 そこに映っていたのは奇しくも自身とよく似た容姿を持つ姉、第一王女ナディアの姿。

 そして彼女が嫁ぐ予定であるバルギス王国についての資料だ。


「私、こう見えて結構怒ってるんだからね? 覚悟しなさい、お姉様(・・・)


 無能なだけならともかく、我が国の未来につながる大事な人材――そして親友であるシェリルを傷つけたナディアはもはやこの国には必要ない。

 今まで幾度となく更正のチャンスは与えられてきたはずなのだ。

 ちょっと反省すればまた元通りの生活に戻れるだなんて、そんな甘い考えは捨てるべきね、と乱雑に写真を置き、鋭い視線をぶつけた。



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