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【書籍化】追放聖女のどろんこ農園生活 〜いつのまにか隣国を救ってしまいました〜  作者: よどら文鳥


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99話 フラフレはアクアと一緒に温浴施設へ行く

 ――ばったん!


 ミーリがハーベスト王国へ帰ったため、ひとりでどろんこ遊びをする生活に戻った。

 ぼっちで農園にダイブ。

 ちょっとだけ寂しいような気もするが、再び慣れるしかない。

 そう思っていたが、農園に入ってしまえばなんのその。


「今日も元気だねミミズさん、てんとう虫くん」


 良質な土も出迎えてくれ、私の寂しかった気持ちが癒されていくようだった。

 しばらく自然を堪能してから、野菜の葉っぱを土に植える作業も終わらせる。


「本日もお疲れさまでした」

「うん。楽しかったよー」

「フラフレ様はブレないですよね。少し心配していました」

「え、なにが? なにかしちゃった⁉︎」


 またしてもアクアに心配させてしまったようだ。

 慌てて尋ねるが、アクアも両手と首を勢いよく振って否定してくれた。


「いえ、フラフレ様のことですから、ミーリさんがいなくなって落ち込んでいたのではないかなと思ったのです」

「うん。会えなくなっちゃって寂しいよ。でも、いつかきっと会えると思うしそのときまで楽しみにしている。私がやりたいことは変わらないからね」

「ふふ……。やるべきことではなくて、やりたいことと言っているあたりがフラフレ様らしいですね。どうやら私の取り越し苦労でした。ささ、こちらへ」

「うんー。ありがとう」


 私の顔についたどろんこをゴシゴシと拭いてもらった。

 アクアは毎回綺麗にしてくれる。

 いつも思っていたことではあるが、アクアになにかお礼がしたくてたまらないのだ。


「アクアってなにか欲しいものってないの?」

「今の生活が楽しすぎてワクワクな日々ですので、なにもありませんよ」

「うーん……」


 アクアは遠慮深い。いや、元王女だったから物欲自体がないのかもしれない。

 だからこそ、なにかお礼をするにしても難しいのである。

 せめて今すぐにできることはこれしかなかった。


「いつも私のためにありがとう」

「ふふ……どうされたのですか?」

「んーと、アクアに感謝のお礼。でも本当はなにかしたいんだけどね」


 アクアは持っていたハンカチで目を押さえた。

 目にゴミでも入ったのだろうか。


「良いのですよ……。私たちがフラフレ様に日々お礼を言う立場なのですから」

「そんなことはないよ。アクアがいてくれるから、フォルスト様がいてくれるから、みんながいてくれるから私は元気でやっていられるんだよ」

「うう……。フラフレ様は本当に突然すぎです……」


 え、なんで泣いてるの⁉︎

 ずっと外にいたし、お腹でも壊しちゃったのかな。

 どこか暖かい場所へ連れていったほうが良いのかもしれない。


「アクア、温浴施設に行こー!」

「これまた突然ですね。気に入っちゃいましたか」

「アクアも入るんだよ?」

「私も温浴は好きですからお供しますね」


 よし! これでひとまずアクアの腹痛は解決できるだろう。

 アクアにお礼をするのはまた今度!

 健康第一!


 ♢


 温浴施設はフォルスト様と二人で来た日以来だなぁ。

 あれ、雰囲気がちょっと違うような。


「フラフレ様。前回の温浴施設とは違い、今日は誰もが入ることができる開放日です。お風呂へダイブや大声で歌うのは禁止ですよ」

「リバーサイド王国に住んでいる人たちとも話してみたいと思っていたし楽しみ」


 まずは身体を磨いて綺麗にしながら、周りをきょろきょろ見渡した。

 同世代からおばあちゃんまで、色んな人が気持ちよさそうに入浴している。

 ダイブはしたいけれど、アクアに注意されているしそっと湯船に浸かった。

 全身の力が抜けていく。


「ぷっはぁ〜〜〜! 何回入っても気持ちいいねぇ〜〜!」


 入浴を共にしている一部の人からは視線を浴びてしまった。

 アクアが呆れながら、人差し指を唇にあてる。


「フラフレ様……。迷惑になりますので、これ以上大きな声は出さないように」

「あ、そうだった! ごめん、気をつける」


 普段、農園からアクアを呼んだり、川の工事では遠く離れたフォルスト様に大声で叫んだりしていたクセが出てしまった。

 加減に気をつけよう……。


 ぽっかぽかの湯船につかり、身体がとろけていきそうな感覚になる。これで間違いなくアクアの腹痛も治るだろう。

 アクアが横で大人しくしているため、私も同じように無言。マナーも勉強中。アクアの腹痛も療養中。

 そこへ、先ほど唯一視線を向けてきた人から声をかけられた。


「聖女様ですね?」

「え⁉︎」

「んが?」


 表向きには私が聖女だということは知られていないはずなんだけどなぁ。

 どこで知ったのかなぁ。


「失礼ですが、どちらさまで……?」


 アクアは緊張した様子で、私の前に立って庇ってくれた。

 もしかして危ない人?

 良い人そうに見えるんだけどなぁ。


 アクアの様子が真剣そのものだし、今までも色々あったから、私も警戒しよう。

 でも、今は金貨とか持っていないし、盗られるものはなにもない!

 大事なメダルも脱衣所に置いてある。

 ん? あ、脱衣所に置いてきちゃったんだった! 大丈夫かな……。

12/25のコミカライズ版発売に伴い、数日間は頻繁に更新します。

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追放聖女のどろんこ農園生活 ~いつのまにか隣国を救ってしまいました~
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