98話 フラフレは異国の友達ができた
「そうねぇ、ミーリちゃんはフラフレちゃんの三割くらいかしらね」
「きーーーーーーーーっ! 分かってはいましたけれど、いざ言われると悔しいですわ!」
ミーリがいつもの発狂をする。
しかし、今までのような荒々しさはない。
敵意を向けた目はしてこないのだ。
「フラフレさんの土とどろんこ遊び好きには敵いませんからね。それに、まだ私は発展途上。いずれ追いついて見せますわ!」
「は……はぁ」
私としてはミーリと勝負しているつもりはないんだけれどなぁ。
お互いに楽しいことを満喫して聖なる力を育てる。
それで良いと思うのだが。
「ふふふ。ミーリちゃんはこの国へ来て、ずいぶんと成長したと思うわ。聖女としても、人間としてもね」
「そんなことはありませんわ。ここにもっととんでもない規格外な人がいるでしょう。まだまだ頑張らなければ……」
「短期間でこれだけ聖なる力を高めたもの。まだまだこれからよ。頑張るのではなく、自然をもっともっと心から愛していきなさい。そうすれば、人生そのものも楽しくなると思うわ」
ミーリはミラーシャさんのことを師匠のように尊敬しているようだ。
いつの間にかミラーシャ様って呼ぶようになっていたし。
ミーリがニコリと微笑んでミラーシャさんに頭を下げた。
「花はこれからも愛していきますわ! さすがにどろんこはまだ愛せませんが……」
「そんなぁーーー」
私の愛する土や昆虫も好きになってもらって、今度来たときにも一緒にどろんこ遊びをしたかったなぁ。
ガッカリしている私に対して、ミーリは笑みを浮かべてきた。
「でも、フラフレさんのことは好きになりましたわ」
私はとても嬉しかった。
すぐに立ち直って満面の笑みでお返しをする。
「うんっ! 私もミーリのことは大好きだよ!」
「では……、今度会うときは忘れましたなんて言わないでくださいね」
「う、うん! 今度はしっかりと顔も名前も覚えたから」
追放されたときにミーリと会っていたことは本当に忘れていた。
あのときはもう思考回路もメチャクチャでどうしようもないくらい絶望していたからという言いわけにもなってしまうが……。
だが、今回は違う。
しばらく会えなかったとしても、ミーリのことは絶対に忘れるなんてない。
「それから……、これからはライバルとして、友達として付き合っていきたいのですが……」
「うんっ! 私もそうだと嬉しいなって思っていたんだぁ! でも良いの? こうちゃく令嬢でしょ?」
「…………。こうちゃくではなく、公爵令嬢ですわよ。聖女に上も下も関係ない。ミラーシャ様から教わりましたわ」
「う、うん」
「ではこれからは友達として、ライバルとして……」
ミーリがそう望んでくれているならば、これからはそうする。
アクアのときと一緒だ。
「わかったー。改めてよろしくね」
「……改めて謝罪しないとですね。庶民だからって聖女のことを舐めた口で接したことは謝りますわ」
「えぇと、昔のことだよね? 別に気にしていないよ」
「あれだけ酷いことを言ったのに?」
「そもそもハーベスト王国のことは覚えていない。地下牢生活の印象が凄かったから……」
「伯父の娘としても謝りますわ。今はお父様が国王をやっていますが、しっかりとフラフレさんのことは伝えておきますので。地下牢に放り込むような人ではないって」
「うん。ありがとう」
今度はミーリから握手を求めてきた。
握手だけでは足りなかったようで、ミーリがそのままギュッと抱きしめてきた。
「ふがぁぁ?」
「ハーベスト王国の人間が持つあなたに対しての印象は、私が絶対に変えてみせますわ。いつか、フラフレさんが訪問してくれたときに歓迎されるように」
「うんっ!」
ミーリのおかげで、ハーベスト王国へ機会があったら行っても良いかなと思えるようになれた。
遅れてフォルスト様とアクアも来て、ミーリや護衛たちが帰っていく姿を見届けた。
さて……。
ミラーシャさんに気になったことを聞く時間である。
「あの……、ミーリの聖なる力はすごいなって思ったんですけれど、私の三割って……」
「ふふふ。あの子のためにも嘘をついていたわ」
「そうだったんですね」
おそらくミーリのやる気を上げるため、浮かれないようにするために言ったのだろう。
「本当はフラフレちゃんの一割くらいかしらね」
「へ⁉︎」
「そんなことを言ったら、まだこの国に留まってしまって、本来の目的であるハーベスト王国を晴れさせることがいつまでたってもできないでしょう?」
私が想定したことと逆だった。
自分自身で力を確認できないことが悔やまれる。
ミーリはこの先もっと鍛錬していくに違いない。
今度会ったときは、その差がなくなって同じくらいになるだろう。
そのときにミーリに見せてもらえばいっか。
「フラフレちゃんもお疲れさま。あなたのおかげで国がひとつ、救われる。そんな気がするわ」
「え? 私のおかげって……?」
「ミーリちゃんの聖なる力もそうだけれど、人格を変えたのはあなたの存在があったからこそよ。フラフレちゃんがいなかったらきっと、陛下たちに門前払いされていたと思うし。間近で見て、よっぽどあなたのことが気に入ったんだと思うわ。聖なる力ではなくて、人としてね」
私はただ、同じ聖女同士でどろんこ遊びが一緒にできたら楽しいなぁと思っていただけだったんだよなぁ。
「あの子がハーベスト王国女王になれたら、きっと良い未来が待っていると思うわ」
もしもそうなったら、私も嬉しい。
ミーリのような人が王様だったら、積極的に交流を持てるようになるだろう。
そうしたら、いっぱいミーリと会うことができる。
すでに馬車は見えなくなってしまったが、ミーリたちが無事に帰れるように祈っておいた。
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応援してくだっている皆様!!本当にいつもありがとうございます!!
書影等もSNSで公開しましたので、ぜひ。
フラフレとフォルストとっても良い表情です!





